薬師寺の刀展を見に行った話 と 古都ぶらぶら雑記

「仏教と刀」展・「噂の刀展」 展覧会概要

会期:2016年3月1日~5月8日 ※大俱利伽羅は4月2日のみの展示
会場:薬師寺 聚宝館・大宝館(奈良県)
拝観料:1,100円(刀展のチケットは頂き物)
展覧会案内ページ:
写真撮影NG

訪問日:2016年4月15日

■旅行日程 2016年4月15日〜4月16日
■東京―大阪交通費 7,680円
■宿泊地・宿泊費 近鉄奈良駅徒歩4分のところ一泊2,100円

薬師寺は大きく二つのエリア;玄奘三蔵院伽藍のある北側と白鳳伽藍のある南側に分かれています。(伽藍=寺院の建築物の総称)

薬師寺への参道は西ノ京駅を降りてすぐ目の前。途中に刀展の看板がありました。

看板がある道から行くと、玄奘三蔵院伽藍の西側から入ることになります。チケットもそこで購入

ありがたいことに刀展のチケットをフォロワーさんから譲っていただいていたので両エリアの拝観券1,100円のみを購入。(※西塔は見られません。)
玄奘三蔵院伽藍を拝観し、南へ下って白鳳伽藍へ。
刀展の会場は白鳳伽藍にある聚寳館と大宝蔵殿です。

まずは「噂の刀展」を見に聚寳館へ

展示場はこんなかんじでした。ぜんぶメモした。

ツイッターの情報によると
・展示されている刀剣が多い。52振
・キャプションが独自
そして初心者向けの親しみやすい展示だということでした。

この度の展示は、いかに刀が美しく、興味深いものであるかを初めて日本刀を見る方や日本刀初級者の方にもご理解いただき、日本刀に親しんでいただくために企画されたものです。また、仏教と日本刀の深い関わりから刀が「心の支え」「お守り」としての性質が強かったことなど、日本刀を深く知ることから、日本人、日本文化、日本人の几帳面さ、かつ真面目な性格などを知っていただき、日本文化の素晴らしさを歴史とともに感じていただきたいと考えています。
(財)日本刀剣博物技術研究財団 公式HP

今回のレポートは刀のレポートというより展示のレポートになります。
早速紹介していきますね。

まずはCOOLな点から。
1.虎徹、加州清光、和泉守兼定、大和守安定、左文字、同田貫、国廣、来国俊、五条国永…ゲーム実装刀と同刀工の刀を一挙に見ることができる!
2.沸(にえ)・匂(におい)の違いをわかりやすく知ることができる!
3.安綱、古備前正恒、宝寿、閉寂などの古〜い刀工の作も見られる!
4.村正祭り
5.キャプションが個性的

1について。
刀剣乱舞でお馴染みの刀工がこんなに揃っている展示って、今まで見に行った中で他にあったかな??
実装刀ではないけれど、同刀工の刀。全然知らない刀工の作を見るよりも、とうらぶファンにとっては親しみのあるラインナップですよね。

そして2。
独学で刀の勉強をはじめると結構な割合で躓く個所かと思います…沸と匂の違い。
今回の展示では沸出来(にえでき)と匂出来(においでき)のわかりやすい刀を一振りずつ、大きな拡大鏡付きで見ることができました。初心者にはとても理解しやすい展示方法!イイ〜!!
(沸と匂は簡単にいうと刃と地の境に表れるグラデーションの表現。焼き入れ時の環境によって起こる鉄の化学変化。点描を想像するとわかりやすいかも。点のつぶつぶがハッキリよく見えるのが沸。点がものすご〜く細かくて、霧状に、エアブラシで描いたようなものが匂。)

3は古い刀が好きな人には幸せな個所…(´◒`*)
「日本刀の源流編」という題で7振の太刀・刀がありました。
ずっと見てみたかった奥州鍛冶・閉寂(ふさちか)の作品を見ることができてベリーベリーハッピー♪美しい刃でした!

4。「噂の刀展」の52振中、15振が村正でした。村正祭りって呼んでもいいよね(笑)
初代村正、二代目、三代目、贋作、村正の師、弟子等々、バラエティに富んだ村正が楽しめます。短刀が多かったです。

5。最後にキャプション。
今まで見た展示の中でキャプションが”わかりやすかった”と感じたのは京博の「刀剣を楽しむ」と熱田神宮。
その二カ所は主に刀の仕様や来歴について詳しく書かれていました。情報が多い、という意味でのわかりやすさですね。
今回のはそれとは違ったわかりやすさ。
専門用語は最小限に抑えられており、現所有者が海外から帰還させた、特殊な研磨をした等のエピソードが書かれている点がおもしろかったです。
また年代の表記に「○○年前」と書かれていたこと。
「平安時代 13世紀」という書き方を通常よく目にしますが、こちらでは「平安時代 約1,030年前」と書かれていました。何年前なのかが併記されていると、より古さ・時代を感じられて良いなぁと思いました。

反対に難しいと感じたことは
1.刀と刀の間隔が狭い
2.キャプションがいつもと違う

博物館・美術館で鑑賞するものの多くは一振一振が個別に並んでいる、もしくは大小二振。
しかしこちらは一つの刀掛けに三振。
それが結構狭い間隔で並んでいるんですよね。

良い点で挙げたキャプションについては、本当の本当に刀初心者にとっては”わかりやすかった”と思います。しかし自分のような刀の勉強をはじめた初級者(?)にとっては、大変に生意気ながらも見辛さを感じる部分もありました。
その最たるは銘と刀匠名の区別が無かったことです。
途中からメモが面倒になってきたので正確な例を挙げられないのですが、
「銘○○」と書いてあるけどそれは銘ではなく刀匠名。茎を見てみるとキャプションに書かれている銘とは違いました。
キャプション(そこそこ文字数ある)も読みたければ刀もちゃんと見たい。でも展示間隔はとても狭い上に本数も多い…

_人人人人人人人人人人人_
> なんか集中できない <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

少し混んでくるとすぐに後ろが詰まり、刀をじっくり見るのが難しかったです。
総合的な感想としては
『「初心者にも親しんで貰える〜」のコンセプト通り、積極的に刀を見に行っているファンよりも、ゲーム実装刀をサラッと見に行ってるの程度の人のほうが楽しめるんじゃないかな?』

何周かまわって見たんですけど、疲れてしまってメモは止めました(笑)
いつものようにガッツリ勉強しに行く姿勢ではなく、ゆる〜〜く臨めばよかったかなぁというのが自分の反省点ですね。

大宝蔵殿「仏教と刀」展

「彫を中心に見るコーナー」「刀剣そのものは聚寳館の方で見てね」という但し書きがありましたが、一振一振展示してあるこちらの方が刀が見やすかったです(笑)
こちらにあった7振はどれも彫物があり、真の俱利伽羅・草の俱利伽羅・毘沙門天・ちょっと変わったデザインの三鈷剣等を見ることができました。
(彫りの真・行・草とは…書道でいう楷書・行書・草書にあたるものです。真=楷書で崩さず、丁寧なもの。一番緻密に見える彫り。反対に草=草書は省略・簡略化されたもの。過去記事の写真・草の俱利伽羅)

刀剣は古来より武器として用いられると同時に日本の文化のひとつとして大きな意味を持っています。仏教の世界でも刀剣を手にする仏様がたくさんいらっしゃいます。では、平和を説く仏様が武器を持つのはなぜでしょうか。薬師寺に伝わる諸仏から「仏教と刀」の関係を解き明かします。
薬師寺 公式HP

もともと仏教(密教)が好きで多少は予備知識があったので、今回の展示を見ても、刀と仏教を結びつけて考えるのは容易でした。
俱利伽羅龍の彫物の解釈について、個人的におもしろいと感じるところがありまして。
ひとつめの解釈は
俱利伽羅龍=黒龍=悪の象徴として、不動明王を表す素剣がそれを倒す・調伏する図とするもの。
もうひとつは
俱利伽羅龍=修験者の使役する童子を象徴する蛇⇒絡む俱利伽羅龍と素剣は不動明王と修験者の一体化とする解釈。
調伏する・仏との一体化……どちらの意図で彫られたのか
そして使用者は何を断つためにそれを側に置き、振るったのか…

「仏教と刀」が来場者にどのように伝わったのか、予備知識が無い方の感想も是非聞いてみたいと思う展示でした。

開始前から「なんかいつもとと違うぞ?」と感じていた今回の刀展。
主催者側の展示企画のノウハウなのか、我々一般人と研究者の方々の感覚の違いなのか。
告知や関連するツイート等、開催を見守っているファンからしたらちょっと不安になる事が多いのではないかと感じました。
私たちの立場ってなに?お客さん?対等?? ボランティアという活動に対してどこまで望んだり、お願いしていいの?
博物館や美術館のような、展示に関わる業務や労力について私は詳しい知識はありません。
しかしもし、次回も開催していただくことがあるとしたらば、整理された、”わかりやすい展示”にして頂けたら嬉しいかな、と思いました。

以上、展示場のレポートと感想でした!

薬師寺の風景

刀展以外の薬師寺はこんなかんじ
玄奘三蔵院伽藍で開催されていた書道展

写真禁止エリアにはシルクロード絵画で有名な平山郁夫氏の壁画がありました。
三蔵院伽藍にシルクロードの壁画、、、これは熱い。

妖怪や伝説上の生物が好きな人は知っているかな? 亀趺(きふ)/竜生九子の一・贔屓がいました。

竜生九子(りゅうせいきゅうし)とは竜が生んだ九つの子。詳しくはwiki先生で。
亀趺は日本じゃあんまりメジャーじゃないかも…朝鮮半島・中国、そしてベトナムと旧漢字文化圏にまで広くいます。
(別に載せなくてもよかった写真だけど妖怪大好きだから載せたかったんだぜ〜〜^^)

薬師寺に行かれた方の多くが思った筈。
「チケットってどこで買えばいいの??」
広いですよね…!
ツイッターでチケット売り場の情報が拡散されていたのも納得。
私の場合、たまたまトイレに寄った後適当に進んだらすぐにチケット売り場に行き着いたので、北側から効率よく見ることができました。
大倶利伽羅展示の時はタイヘンだったんだろうと院内散策中に思ったり。
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御朱印
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いいですね〜〜力強く優雅な御朱印!
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小学生の頃に買った扇子と高校生の頃に買った般若心経の巻子。
これとほぼ同じものがまだ売られていました。
変わらないところにちょっとほっこり。

奈良散策

薬師寺を訪れた次の日は奈良散策。
ここからもまだまだ記事が長いですよ…御覚悟!
まずは近鉄奈良駅からすぐ近くの興福寺へ。
見るしかないでしょ〜〜〜八部衆!阿修羅像!!(°∀°)
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中は撮影禁止、、、といってもググれば画像がたくさんでてきますわな。こんな
金剛力士像の素晴らしいムキムキ、八部衆の豊かな表情、そして阿修羅の腕の角度……最高にクール!多幸!!❀.(*´▽`*)❀.
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そういえば興福寺の八部衆の半分は、普通の八部衆と違うんですね。
天→五部浄、龍→沙羯羅、夜叉→ 鳩槃荼、摩睺羅伽→畢婆迦羅
…メンバーチェンジ?? ちょっと勉強しよ(゚♢゚ )
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御朱印と御詠歌
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鹿〜〜〜〜〜鹿がいっぱいいる〜〜〜!!
奈良博にも鹿〜〜〜!!
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そこら中に鹿がいるのでせんべいをあげながらのんびり春日大社へ。
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写真に慣れているせいか、なかなか正面を向いてくれない鹿ちゃんのラッキーショット
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カメラを向けるとフイッと横を向くんですよねこの子たち!
本殿に行く前に万葉植物園へ
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訪れた時期がちょっと早かったので藤棚は拝めませんでした><
しかし珍しい緑色の桜は見ることができました〜!写真左上のやつ。
万葉園の隣の春日荷茶屋にてお昼ご飯。
大和名物膳を食しました。
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お粥は月変わり。私が食べたのは4月のお粥。薄味でしたが添えてある漬物とマッチしていておいしかったです♪
食べたかった柿の葉寿司も食べられて満足。なかなかボリューミーでした。
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本殿の写真、載せられるようないいのがなかったので御朱印だけ(笑)
春日大社の次は三条小鍛冶宗近!
小山の上にあります。
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ズラッと並べられた包丁たち。ワーオ
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気軽に試し切りをさせて貰えます。
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私   「面倒くさがりなので、お手入れがラクなのってどれですか?」
店員さん「えっ、ラクなやつ?そうだな〜この辺はすぐ錆びるからこれとかどう?」
最初に勧められたのは写真の右から3番目と4番目の庖丁。ダマスカス鋼の美しい模様!わぁ〜これ素敵!
でも試し切りをしてみたところ左側の庖丁の方がなんか好き…でも17,000円…ぐぬぬ!
というわけでそれよりも少しサイズの小さい、左から2番目の庖丁を買いました。
じゃーん!
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こんなに美しい庖丁があるなんて知らなかったなぁ。大切にしよ!

まだ続くよ!

最後は自転車で平城宮跡へ。
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興福寺や春日大社とは丁度反対方向にあります。
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とにかくだだっ広い!
「古都の風を感じるーーーーーー!!!!!!」
平城宮跡には資料館や庭園もあるのですが、私はひたすらこの辺をぐるぐる走ってました。
時間は既に16時を回っていて、西日がキツかったなぁ…見事にデコルテが焼けましたw

朱雀門
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平城宮跡を横切る線路。
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電車の奥に見えるのが朱雀門ね。
この電車は西大寺駅から近鉄奈良駅に向かう路線です。そう!薬師寺から近鉄奈良まで行った人は平城宮跡を通ってます!ぜんぜん気づかなかった〜

平城宮跡から近くの古墳へ
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古墳を間近で見たのは初めて。
周りの木の葉が揺れる音と、川の水面の細波。静かで落ち着く。
歴史ある建築物が日常的にあるってどんな感じなんだろう。
山間に沈む太陽を背に、今回の遠征も楽しかったなぁと思いながら帰るのでした。


東京に戻りさっそく包丁を開封。
トウッッ!
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号 イカ飯切
おわり。

*大阪・奈良編*
其の一 石切丸と小狐丸を見に行った話
其の二 薬師寺の刀展を見に行った話 と 古都ぶらぶら雑記(この記事)

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