■日時  2017年12月8日
■場所  東京国立博物館


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今回の展示では基本的に同一作者の作品が二振りずつ、十二振り展示してあります。
光忠や行光はパッと見ただけでも姿や刃文などわかりやすい部分で違いがあったので、刀に詳しくない方でも楽しめると思います。



そう!正宗が一度に三振りもみられます!
日本刀=正宗というイメージがありますが、どこに行っても正宗に出会えるわけではなく…むしろ一番よく見る機会があるのはおそらく備前刀。正宗の名作を見られる良い機会ですのでそういう意味でもオススメ。

ではではさっそく紹介していきたいと思います。


太刀 銘正恒
平安時代・12世紀

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恒の忄は一本線、つまり正恒の初期の作なのでしょうか。平安刀ではありますが、優美というよりはかっこいいと感じました。
刃文は直刃調、小乱れ交じる。板目肌は肌立ち、ザリザリしそうな質感があります。正面に立ってすぐわかるくらい地斑映りがはっきり見えるのが特徴。


刀 無銘 伝古備前正恒
平安時代・12世紀

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先ほどの正恒からこちらに視線を移すと明らかに雰囲気が変わります。きれい。
光を反射した肌がとても滑らか。潤いもあり展示刀剣の中で一番肌が詰んでいます。こちらの正恒にも映りがたっていますが、濃淡が小さいので見つけにくいかも。

全体を見渡して思いましたが、やはりこの二振りは反りが強いですね。


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短刀 銘左安吉 名物一柳安吉
南北朝時代・14世紀 重要文化財

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とうらぶクラスタにはおなじみ、左文字三兄弟を作刀した筑前左文字の子と伝えられている刀工です。
ガッシリとした身幅のある短刀。互の目・小互の目の刃文に帽子は乱れ込んで返る。金筋よく入り肌立つ。


刀 無銘 左安吉
南北朝時代・14世紀

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南北朝体配。あとに出てくる左の刀と姿と似ています。鋒はやや猪首風。
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互の目、小互の目を交えた刃文で、肌詰んで沸よくつく。
先ほどのは匂口がもや〜っとしていたのに対し、こちらは締まっています。

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太刀 銘光忠
鎌倉時代・13世紀 重要文化財

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最初に目に入ったのはたくさんの金筋。腰をかがめてハバキ元〜刀身真ん中を見上げるようにして見るとうねうねした線がよく見えます。
隣の光忠と比べてややスラッとした姿。丁子を主体とした刃文。鋒の方が特に、一文字の刀でよく見るような形の丁子…かな。肌は荒いです。


刀 均象嵌銘本阿(花押) 光忠
鎌倉時代・13世紀 重要文化財

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先ほどの光忠よりも輪郭がハッキリとした丁子・蛙子丁子で、生駒光忠のような丸みのある丁子刃です。足・葉もしきりに入って華やか。光忠二振りは刃の入れ方も異なり、先ほどの光忠は鋒まで小丁子を焼いているのに対し、こちらは小乱れから細くのたれ刃ように変化しています(地味な刃文になってゆく印象)。地鉄の色はこちらが黒いですね。姿もこちらは広くがっしり。
光忠二振りは姿・刃文・地鉄の違いがよくわかりますね。
それにしてもこの光忠、離れて見ても美しい丁子…

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短刀 銘行光
鎌倉時代・14世紀 国宝

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刃と地鉄のコントラストが強く、スッキリとした直刃。新藤五国光を思わせます。鋒の返りもきれい。肌立ち、うねる地景も見どころ。フクラ枯れ、元先の幅が結構ある姿です。


短刀 無銘 伝相州行光
鎌倉時代・14世紀

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これは同刀工の作なのか?と思うほど、さっきの行光と全く異なる姿をしています。
まず姿、さっきのはかなり鋒が細くなっているのに対し、こちらはやや張り気味のようにも見えます。刃縁もこちらの方がふんわり。刃文はややほつれた直刃調で少し飛び焼き交じる。

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刀 金象嵌銘 ふきふかき 山もかすみて ほのぼのと あけ行春の たきまちのそら 一翁
伝当麻 鎌倉時代・13世紀 重要文化財

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愛刀家・大久保忠寛氏がこの刀を所持していた時に記した句とのこと。
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「大和物っぽいなにか」を感じたのですが…鎬幅の広さかしら?
直刃調小乱れに長い金筋が入ります。


刀 金象嵌銘銘 本阿(花押) 左 伝筑州左 
南北朝時代・14世紀

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姿は宗三左門字や江雪左文字と似ています。大鋒、もしくは中鋒伸びる。鋒は乱れて焼詰め。直刃調に小乱れ、沸よくつく。
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図録を読んでみると「江雪左文字と比べると、刃文に高低差がなく、左の作品と考えることはできない。」とあります。しかし明るく冴えた匂口や黒味を帯びた明るい地鉄から、左もしくは安吉の代表作に見ることができるため、左の刃文と異なる事は承知しつつも、左の作品であると判断したようです。
なるほど…江雪左文字を復習してからもう一度見に行きたいです。

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刀 金象嵌銘 城和泉守所持 本阿(花押) 正宗磨上
鎌倉時代・14世紀 国宝

津軽正宗IMG_1183
津軽正宗とも呼ばれる正宗。
姿は隣の観世正宗、ハバキ元の肉づきも亀甲貞宗と似たところを感じます。武蔵正宗とはタイプの違う正宗。流麗な姿。
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二本目の正恒のような整った詰んだ肌。しかし沸がみっしりついているので遠目から見てもちょっとザラザラしていそう。肌立ったザラザラではなく沸のザラザラ感。刃文はのたれ主体。刀身真ん中より少し左側にあるモヤっとしたものは飛び焼き?湯走り?でしょうか。



刀 無銘 名物観世正宗
鎌倉時代・14世紀 国宝

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※全体写真を撮り忘れたので過去に撮った写真を載せます
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こちらものたれ主体の刃文。金筋砂流しよく入る。沸よくつき、杢目や板目等の肌目もよく見えます。
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刃中の沸、刃と地の境の沸など場所によって沸の粒の大きさが違います。
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観世正宗といえばこのハバキ下にある不動明王の梵字と浮彫りの剣形。
何度か磨り上げられているうちにこのように隠れてしまう位置になったのですが、何もわからなかった頃はなぜこんな見えないところに彫るの?正宗ってすごいなー!と思っていました(笑)
ちなみに裏側にも愛染明王の梵字と倶利伽羅龍が彫られていて、こちらは図録にて確認できます。

正宗は二振りともすごいですね…輝いていました。今まで見た「すごい刀」は存在感の圧が強い物が多かったように思いますが、正宗はそこまで威圧的ではないのに、しっかりとそこに在ることを示す独自の色を放っていますね。

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古今銘尽大全
江戸時代・享保2年

古今銘尽大全
正宗・貞宗・広光のページでした。広光の激しい刃文が目を引きます。1/30より展示ページが変わるとのこと。


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今回の特別展は図録も発行されています。茎の錆色がきれいですね!
解説にも注目。
全体的に「理解して解説している」という雰囲気ではなく、志の高い人が「難しい」「研究中だ」と言っていて、それでいて刀が好きで真摯に向きあっているという印象を受けました。探求の真っ最中という感じ。(なんせ「黒庵の境地に至るには」ですものね)
刀剣を武器としてではなく美術工芸品としてとらえるとき、その美はほかの美術工芸品と比べて明らかに抽象的で、理解は難解である。
それでも観世正宗は美しく力強い。
この理由を完全に把握するのはおそらく不可能であるが、各人の試行錯誤も刀剣鑑賞の一態度であろう。

観世正宗の解説ページの最後に書いてある言葉。
刀剣鑑賞をしていると、ここが好みだから好きという刀もあれば、なんでかよくわからないけどでも好き!という刀もあったりしますよね。
この「なんでかよくわからない」を勉強不足と一蹴せず、難しいだが美しいとしているところは、鑑賞の勉強を始めたばかりの人や、ライトに楽しみたい層には明るく響くのはないかと思いました。
ここと「ごあいさつ」と「おわりに」だけでもぜひ読んでみてね。

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最近刀展示に行けていなかったのとブログを書いていなかったので、展示を見るのも全くブログ目線ではなかったのですが、見ているうちにこう…書きたい気持ちがムクムクと。やっぱり刀は楽しいですね^^
この特別展の期間中、トーハクはしばらく展示刀剣本数が増えます。
古備前・古青江・来・粟田口・長船・一文字・相州・関・堀川・虎徹…様々な有名刀工の作品が約30振りも。小龍景光は1月8日まで、大包平は1月10日から展示スタートなのでスケジュールを調整して訪れてみてくださいね。 おわり


刀剣鑑賞の歴史 2017年12月5日〜2018年2月25日
伝当麻、金象嵌銘の左は1月28日まで。1月30日から亀甲貞宗と郷義弘に展示替え。
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