東京・京都弾丸旅行記 1日目 トーハク&刀剣博物館

東京まで1万円で往復できるキュンパスなる切符が出るだと?通常料金で往復31,220円かかる民は飛びつくしかなかったのでした。そうだ遠征行こう。

キュンパスとは
JR東日本から発売された「旅せよ平日!JR東日本たびキュン♥早割パス」のこと。JR東日本圏内のフリーエリアが1日乗り放題。新幹線、在来線、一部のローカル私鉄、BRTで使用可能。お値段なんと10,000円!ただし平日限定。
発売期間:2024 年1 月14 日〜 2 月29 日 利用期間:2024 年2 月14 日〜 3 月14 日 詳しくはJR東日本プレスリリース

まずは計画だ

上げる予定がなかったので字がきたない。適当な裏紙

年始以降~4月くらいの展覧会の東日本の展覧会をズラズラと書き出し。
本命の正宗十哲展は2月11日で終了のため、残念ながらキュンパスの期間外。でも絶対見に行きたいからキュンパスとは別に行こう。そうしたらどんな組み合わせでハシゴできるかな?などと考えながらスケジュールを組み立てます。
前回遠征1月16日・17日の新幹線切符は2023年12月17日には取っていたので、このメモを書いたのはその前ということになりますね。その時点で情報が出ているものが選択肢。情報公開が早いと遠方の民にはたいへん助かります。

一日だけ有効の切符なので、日帰りにするか宿泊を入れるかも思案。その間どうしても京都国立博物館の展示を頭から払拭できず……当然キュンパスのエリア外。でも東京から京都なら慣れたルートなのでは?京都行けばいいんじゃん?コロナで数年乗っていなかった夜行バスにも久しぶりに乗りたい!京都行こう!!という感じで今回の遠征は東京と京都に決まりました。

それでは2日にわたる遠征記録、一日目から書いていきます。

3月5日 一日目 東京

朝7時半ごろに出発し、約3時間で上野駅に到着。
ちょっと早いですが、一旦博物館に入ると数時間は出てこないので先にお昼ご飯。今回は携帯食じゃあないぞ。

T’sたんたんでたんたんボウル食べた

東京国立博物館 いつもの

上野公園、平日なのになぜこんなに人が多いの?!
修学旅行生と思われる制服の学生集団や外国人がたくさんいるのが遠くからも見えました。さらに近づくとトーハクのチケット販売機には長い行列が。年パス所持者ではないので、私もチケットを買わねばなりません。
そういう時はオンラインチケット。一応列に並びつつ、手元のスマホでサクッとチケット購入。

東京国立博物館 チケット購入案内ページ
↑ここから特別展や総合文化展それぞれのチケット購入ページに行けます。

トーハクに限らず、大行列の施設や展覧会に行った際は、「並びながら公式HPでオンラインチケットの有無を確認」これを覚えておくとスムーズです。もちろん一番よいのはチケットを事前購入しておくことですがね。

トーハク総合文化展のオンラインチケット

本館 1階13室

展示品リスト 展示期間2024年3月5日~5月26日

太刀 名物 童子切安綱 平安時代 10~12世紀 国宝 F-19931-2

展示ケースの配置が変わってからは初めて見る童子切。その隣には別の刀ではなく拵えが。なんだか特別感。
まずは姿。堂々と格好良いですよね。加えて個人的には爽やかさも感じます。力強い太刀って見るからに「バーン!」とか「強いぞ強いぞ」というような濃さや圧力を感じますが、童子切はそれがなくスッキリしている。なのに力強い。そこが特に好きです。
童子切といえば鎬筋を越えるほどの広い映りが特徴だと記憶していたのでまずそこを見てみました。
上の写真だと右下のが一番濃淡がわかりやすいでしょうか。以前はもっとクッキリ見えていたような気がしたのですが、今回はコントラストが低く感じました。でもよく見えますね。
そして刃文。どれどれ…見、みえない薄い!そうだ童子切は潤んだ刃文だった。
匂口が潤む/眠い/沈むという用語を初めて覚えたのがこの太刀でした。刃文のラインがぼんやりしていて見えづらい、もしくは見えない時に使う用語です。

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覚えた当時は刃文が見えやすい・見えづらいの判断がつかなかったのですが、今見ると一目で「あ、この刀は刃文がすごく見えづらいな」と分かるようになりました。成長を感じた へへへ 
なので刃文写真はがんばってもこの程度。キャプション等では「小乱れ」「足が入る」とありますが互の目や丁子とも違うけれどボッボッと立つような刃文に見えます。小乱れと呼ぶには動きが大きく、足と呼ぶにも広いような。写真上段真ん中では金筋を捉えることができました。

匂口が潤む/眠い/沈むについて…この用語はネガティブな意味で使われることがあります。「匂口が締まる」とか「匂口明るく冴える」に対しての、出来の悪さの表現です。なので他人の刀に対して使う際は注意が必要です。
私自身は刀剣用語を勉強している最中なので、覚えるためにブログ内では使用しています。こう見えるからこの用語に該当するのかな?というかんじ。出来の良し悪しを語れるほどの玄人ではないですしね。 そういう特徴も刀剣それぞれの個性だと思うんですけど。

記事を書いていて気づいたのですが、どうも童子切の刃文の潤みに頭がとらわれていたようで、今回はそこを比較対象として刀剣を見ていたと思います。

梨地糸巻太刀 江戸時代・17世紀 F-19931-1

童子切安綱の拵えです。赤みを帯びた茶色がシック。そしてぴっかぴか。つい最近作ったかのようにツヤツヤで光沢のある鞘です。柄や腰に下げる部分は糸なので、色あせやほつれがありますが、よく見ないと目にはいらないくらい。江戸時代17世紀作ということは西暦1603年~1700年の間。現在2024年から遡ると321~423年前(計算合ってる?)

短刀 越中則重 鎌倉時代 14世紀 重要美術品 F-20201

越中則重はにぎやかで見ていて楽しいですよね。ダメ押しとまでに帽子に荒沸がついているのも好き。金筋砂流しがしきりにかかる刃で、特に鋒に近い側に見えるうねうねとした線、下段まんなかの写真ですね。これは金筋に入るのでしょうか?それとも砂流し?肌ははっきりした松皮肌ではなく、ちょっと変形しているような……強い風の渦や気流のように見えました。じゃあ刃文は雲で金筋は龍だ。
最近はあたりまえのように越中則重=地刃ともに華やかと見ていたのですが、どうして則重ってこんなにモリモリな表現をしたかったのでしょう。周辺の刀工の作風とか則重の弟子ってどんなだろう。という新たな疑問が生まれました。

太刀 古備前正恒 平安時代 12世紀 F-132

正恒……いつみても大好きだったはずなんですけど、今回はちょっと刺さらなかったです。どうして?
とりあえず映りの写真は撮っておきたかったから貼っておこう。
なんとなくですが、童子切の刃文の見えづらさにこの正恒も引っ張られたのかもしれません。刃文が見えづらかったので「なんか疲れた!」という気持ちになったのかもしれません。でも姿すらもグッとこない正恒って今まであった?ちょっと名刀の見過ぎで基準がおかしくなっているのかも。

太刀 古青江康次 鎌倉時代 13世紀 F-19831

青江といったらまず縮緬肌を探したくなりますね。なんか癒される。
それからこのようなポツポツ霰を散らしたような刃文(用語を使うと”葉がしきりに入る”という表現かしら)が好きです。

太刀 綾小路定利 鎌倉時代 13世紀 F-20105

正恒がう~んだった代わりに、今回はめずらしく綾小路定利が好み見えました。定利こそ今まで何度も見ているのに、未だに好きなところを見つけらない刀工だったのですが……どういう心境の変化?
先ほどの古青江康次もこちらもちょっとモコモコした刃文で、しかもそれが見える。この日最初にみた童子切の「見えない」が頭にこびりついていて、無意識に見えることに安心感を抱いていたとか?
なにも考えずに見て「いいな」「素敵だな」と感じる気持ちって大事ですよね。

刀 長曽祢虎徹 江戸時代 17世紀 F-304

虎徹を見て匂口の表現…今回フックとなった童子切とはまったく異なるのでちょっと衝撃的でした。「匂口明るく締まる」という用語を再確認。

虎徹といえば数珠刃なのでこれはどうかしら?モコモコの連なりは大小の連続のように見えるから数珠よりも瓢箪刃寄りじゃない?(右の写真参照) 焼きの谷、足は煙りこむようになっているかしら?(真ん中の写真参照) しゅわしゅわとした淡さがあってこれは煙りこむような足と呼べるのではないでしょうか。でもモコモコが瓢箪っぽいから瓢箪刃かな?

キャプション「数珠刃ですが」

むずかしい

数珠刃と瓢箪刃についてはこの記事で解説

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刀 津田助広 江戸時代・延宝5年(1677) F-20098

虎徹と国広

虎徹たちをみたあと童子切をみると刃縁のクッキリさに違いを感じます。

最近思うのですが、トーハクって刀の写真を撮るの難しくないです?ガラスとの距離が遠いし自分が映り込むし…以前からこんなでしたっけ?

国立科学博物館

上野公園周辺を歩いていると鉱物の展覧会のポスターが目に入り、急に鉱物や動物等の標本が見たくなったので科博にも行ってきました。こうしてまた刀を見る時間がギリギリになる…でもたまに5歳児に返りたいんですよね~標本見るの大好き。

猟師をやるようになってから科博に来たのは初めて。「食べた!」とか「獲ったことある!」という感想や、気候が変わって大物四つ足が北上してきている→いつか自分もこれらと対峙する時も来るのか?という猟師目線で標本を見たのは、これまでにない新鮮な気持ちでした。

刀剣博物館

展覧会概要

展覧会名:第69回重要刀剣等新指定展
会期:2024年2月23日~4月14日
展覧会案内ページ:https://www.touken.or.jp/museum/exhibition/exhibition.html
展示品リスト
備考:すべて撮影禁止

入館料:1,000円

訪問日:2024年3月5日

1. 刀 無銘 五条国永 山城 平安時代末期

刃長:72.0cm
太刀ではない国永。刀です。
小乱れ、小丁子の刃文で、丁子がとても小さいです。これもね、前日の安綱を引きずって、「刃文がハッキリ見える」とメモしていました。足・葉の間にしきりに金筋砂流しがかかってにぎやか。うるおいのある板目肌。
打って変わって姿は優雅。あの賑やかさがこの姿の中に納まっているって…ギャップを感じるような雰囲気がありました。離れて見ると落ち着いていて、近づくと賑やか…ゲームの鶴丸国永みたい!

12. 短刀 銘 信長(浅古当麻) 越前 室町時代前期

刃長:28.0cm
とても整った中直刃。そこにかかった互の目…?おや刃文が二つある???
と思ったらこれは片切刃造りですね。中直刃と思ったところは切刃造りの刃の部分でした。
鎬筋にちょうど互の目が掛かっているので中直刃に互の目がかかっているように見えたのです。おもしろ~い!
互の目と書いていますが、正確に言うと互の目が崩れたような、箱刃のような形。その間を砂流しが走り華やかでした。

15. (折返銘) 備前国助村(古備前) 備前 平安時代末期

刃長:68.8cm
今回の目的である助村。初めて見ます。まず銘は折り返し銘。身幅は普通かな。小鋒で腰反りなところは古備前の特徴そのまま。棒樋を有していますが折り返し銘で隠れており、樋の終わりが搔き通しなのか流しなのかはわからず。
キャプションに書かれている「三日月宗近の如き二重刃風のとび焼き」はまさにそう。パッと見で三日月宗近の打ちのけを連想させます。違いはあまり弧を描いていないだけ。
映りがたくさんあるのも一目瞭然。「地斑映りが鮮明」とのこと。匂口は柔らかく、小丁子、足葉がしきりに入っています。

21. 刀 無銘 兼光 備前 南北朝時代

刃長:76.2cm
刃文に白く化粧を付けない研ぎ方をしているのでしょうか。まずそこがおもしろいです。(こういう研ぎ方何と呼ぶのだろう?)
直刃基調で直角に切れ目を差し込んだような互の目……兼光の片落ち互の目です。
大鋒。鋒まで丁寧さを感じていいなぁと思いました。

他にも貞宗、行光、新藤五国光等のお気に入り刀工の作もありましたが、今回は上に感想を書いた刀剣たちがより気になりました。
それにしても刀剣博物館は本当に見やすいですね。気のせいか分からないけれど、最近トーハクにやや見づらさを感じるのでより刀剣博物館の見やすさにほっとさせられます。

刀剣用語をまずまず覚えてきて、多少は違いが見えるようになって、今ちょうどひと段落したような気持ちだとこの日の見て感じました。そんな充実した気持ちで夜行バスに乗るべくバスタ新宿へ……

新しいことを吸収する余裕とか準備ができたのか、興味を抱かなかった刀工が気になってたり、細かい部分に疑問を抱いたり、次のステップに進むための勉強のテーマが湧いてくるのを最近記事を書いていて思います。
刀剣触れる機会が多くないので、湧いた疑問をしっかり意識して刀剣勉強に臨んでゆきたいと思ったところで今回の記事を終わります。

ラジオでも語りました。作業のおともに!

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