■日時 2017年7月15日
■場所 森記念秋水美術館(富山)
■入館料 800円(割引あり)
■交通費 200円(富山駅→大手モール駅)
夏の遠征第2弾は森記念秋水美術館で開催される開館一周年記念特別展『日本刀物語』。
全国有数の日本刀を所蔵しています。
今回の特別展では、所蔵品のうち「重要美術品」に指定されている日本刀約60振りを展示するとのこと。
約60振り!??
圧倒的本数に加えてすべてが重要美術品。
そしてこれが展示品一覧。
有名刀工だらけ五箇伝全部入り。
中でも会期前から注目を集めていたのが五条国永の太刀。
刀剣乱舞の人気キャラクター・鶴丸国永と同刀工の作です。
国永の作は、展覧会ではなかなかお目にかかることができないですよね…(父の兼永なら2回程見たことがあるけど国永は無いです)
期待が高まる!!
2階、3階のセッティングが終了しました。
3階鑑賞室での刀剣展示は初めてです。各階で雰囲気が違っていて面白そうです。 pic.twitter.com/F1Xy8BEnrB— 森記念秋水美術館 (@morishusui) 2017年7月10日
展示室の様子。刀がズラーーーッ
写真撮影禁止なので美術館さんのtwitterを掲載します。
一振りずつの紹介の前にまずは全体の感想から。
ズバリ良作ばかりです。
どれを見てもキレイ、いいねという感想でした。平均値が高い。
しかし個人的にはそこが難しかったです。
というのも、どれを見ても美しいので「コレだ!」という作が浮かび上がってこないというか…
今の自分の鑑賞レベルでは、好み以外では際立った部分を見出すことができませんでした。
そんな調子で60振りはなんというか…終わりがなくて……疲れて……申し訳ないですが、もういいやって気分になりました…いや、あの、本当にすみません…
(消沈) (…λ…………トボトボ)
そんな中でも気になった数振りを紹介していきますね。
太刀 銘国永
平安時代末期〜鎌倉時代初期
開館一周年記念特別展「日本刀物語」 展示作品の御紹介(1)
太刀 銘/国永(五条)
平安時代末期から鎌倉時代初期頃の山城国の五条派の刀工。
同工の作に、名物「鶴丸国永」(御物)がある。
国永の有銘作は僅少で、その中の一振り。
京物と称される雅味溢れる一振り。 pic.twitter.com/RyUIlxvu0s— 森記念秋水美術館 (@morishusui) 2017年5月23日
展示室いの一番は期待の国永。
いかにも古い時代の京物ってかんじですね。
腰反り、小鋒、そして細身な上品な姿。
刃文は直刃を基調とし、小足・京逆足入り、(見間違いかと思ったけど)金筋砂流しも入っています。
肌はとても精美で、一部に杢目を見つけること以外は肌目わかりませんでした。図録曰く板目肌に杢目交じるだそう。細かな沸が厚くつきます。全体的に丁寧な作りという印象を受けました。
見ていて気になったのは茎。
刀の角度と照明で、茎がとても見やすかったです。この太刀は磨り上げられており、3色に異なる色・錆び具合が確認できます。(ここ萌えポイントだと思う)
短刀 国光
鎌倉時代末期
開館一周年記念特別展「日本刀物語」 展示作品の御紹介(12)
短刀 銘/ 国光(新藤五)
国光は、相州鍛冶の事実上の祖で、正宗の師。地鉄は小板目つみ地景が入り、刃文は直刃に金筋が頻りに入る。地沸が厚く付いて沸映り(白い靄のような)が鮮明にたつ。上品で綺麗な出来となる。 pic.twitter.com/4fryvnsrq3
— 森記念秋水美術館 (@morishusui) 2017年6月28日
新藤五国光の感想はもはや定番化しているので書く必要があるのか……?
と思うほど作風にブレないですね。
実物を見た際は地鉄が割と均一に黒いと思いましたが、図録では刃から棟にかけて淡くなっています。きれい。
脇指 伝貞宗
南北朝初期
開館一周年記念特別展「日本刀物語」 展示作品の御紹介(9)
脇指 無銘/ 伝貞宗
貞宗は鎌倉末期〜南北朝期の相州の刀工。
正宗の弟子とも云われる。
本作は南北朝期の幅広の姿を呈し、地刃が沸づいて明るく冴えた出来口を示す。
特に地景が力強く綺麗な優品。 pic.twitter.com/ssdhI3O3i7— 森記念秋水美術館 (@morishusui) 2017年6月9日
刃文が直刃調になって肌のギラギラを抑えた伏見貞宗………のような と言って伝わるか(?)
貞宗の作によく見られる、梵字と素剣が彫られた脇指。少しよれた直刃で、帽子はきれいに小丸に返ります。整った板目肌に地沸が厚くつき、地景しきりに入る。
個人的に思う貞宗らしい貞宗が見られてニッコリ。
余談ですが、隣に並んでいた秋広は、秋広だけど貞宗っぽさもあり好きでした。
余談2 貞宗の彫りについて。
貞宗作品の彫りは大進坊(行光や正宗の彫りも手がける)がやっていると思っていたのですが、「大進坊か別の人かはわからないが、金工師の視点から見て、行光・正宗の彫りと比べると貞宗の彫りは繊細だ」という話を装剣金
工師の木下氏から伺っておりました。
図録を見てみると「貞宗の特得意とする彫り口の(以下略」という記述があります。
貞宗は自分で彫っていたの? という疑問がわきました。
太刀 長光
鎌倉時代中後期
今まで見てきた長光が割としっかりした身幅のものが多かったので、それらと比べると細身だと感じました。
(画像転載不可)
生ぶ茎のようですが、茎先端の欠けは何の用途があったのだろう…飾り?
刀 伝近景
歴応三年の年紀がある
開館一周年記念特別展「日本刀物語」 展示作品の御紹介(10)
刀 無銘/ 伝近景(暦応三年の年紀がある) (明智近景)
明智光秀所用と伝わる刀。幕末までは「備州備州長船近」の銘と「明智日向守所持」の金象嵌が入っていたとされる。
乱れ映りが鮮明にたった鍛えが秀抜な一口。 pic.twitter.com/Y1oYtemEi9— 森記念秋水美術館 (@morishusui) 2017年6月15日
明智光秀所用とのこと。ハバキに光秀辞世の句
が書かれています。
そして最後に、3階に展示してあった
黒塗紅葉文鞘虫尽金具脇指
黒地に紅葉を散らした可愛らしい鞘ですが、名前の通り金具が虫づくしなんです。
柄頭はヤゴ、鐺(こじり、鞘のおしり)にはトンボ、目貫にカマキリ、 鍔はアリとコオロギ?キリギリス? 他にもセミ、てんとう虫、カブトムシ、蝿、蜘蛛など、びっくりするほど虫がくっついていました。
特にヤゴとトンボの存在感。虫が苦手でなければぜひ見てみて下さい!
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とにかく本数が多いので、自分のような少しだけ刀がわかるかな〜レベルの人は、
じっくり見るよりもサクサク ササッと見て、気になったものだけ見返すという見方をオススメします。遠征の方は特に。
(こうやって見ていたつもりなんだけどな〜)
刀を見てワクワクする要素は、刀の出来の他に、自分の好みかそうでないかにも左右されることをここ最近よく感じています。
その他にも疲れやテンションなど、その時の環境で作品から受ける印象は変わります。今回は諸々タイミングがよくなかったのかもしれません。く゛や゛し゛い゛!!!
(画像転載不可)
わからなかった部分は図録でカバー。
かなり細かく解説されています。
それにしてもこの表紙、色もデザインもかわいいぞ!!
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こんなかんじで富山での遠征は終了しました。
最後に訪れたところの写真たち。
北前船廻船問屋 森家
縁が無く繋がっている畳。川の流れを表しているそうです。
エドヒガンザクラの天井。良い木目だな〜
富山市ガラス美術館。
美術館と図書館の複合施設。建物の美しさももちろんのこと、図書館とカフェと、更に美術館をくっつけている空間が素敵。身近なところでアートと接することができる施設って良いですね!
そしてカフェのフードも美味しかった〜!
加賀棒茶とおからスコーンのセット。ふわっふわのスコーンは言うまでもなく美味。
今回の遠征はあまりたくさん施設を回らなかったので、結構ここでのんびりしていました。
富山は予想通りに食べ物が美味しかったし、人も親切で訪れてみてとてもハッピーになれたのに……秋水美術館だけが苦かった!
刀を見る目、鑑賞の方法をもっと高めたいと思いながら夜行バスで次の目的地へ向かうのでした。おわり
開館一周年記念特別展 日本刀物語
場所:森記念秋水美術館
会期:2017年7月15日(土)~9月24日(日)
※伝則重は7/15〜8/20、宇多国房は8/22〜9/24 その他の作品はは通期展示
公式HP:http://www.mori-shusui-museum.jp/schedule/
夏の刀剣遠征2017
其の一 物吉貞宗と五月雨郷を見に行った話 〜天下人・徳川家康と尾張徳川家の至宝〜
其の二 国永の太刀を見に行った話 〜日本刀物語〜
其の三 博多藤四郎を見に行った話 〜あらたな国民のたから‐文化庁購入文化財団展‐〜