「水彩刀剣」

最近ツイッターなどでこの単語を目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
水彩刀剣はその名の通り水彩絵具で描かれた作品です。

なんて瑞々しく繊細。

新たな刀剣表現をご覧ください。




水彩刀剣の作者はマツヨイ様@mty_nrms

以前よりその作品を存じてはいたのですが、先日ついに生原稿を拝む機会に恵まれました。
ただ上手だなと思う以上に、今まで自分が見ていなかった刀剣の表情に気づかされ
これはぜひたくさんの方に紹介したい!と思いブログ掲載の許可を頂きました。


水彩刀剣を紹介する前に押形(おしがた)のことを少し。


古刀押形
今村押形
日本刀を絵で表現としたものといえば伝統的には「押形おしがた」と呼ばれる手法があります。
石華墨という固形の墨を使い、白黒のみで表現されます。
写真では光の加減で刃文や肌の詳細な部分を写しきることは難しいですが、押形は作者の目で確認したものをそのまま書き込んでゆくので、写真よりも詳細に刀の特徴がわかるという点で優れています。

最近の刀剣展示では、刀剣と一緒に押形も展示されていることがありますね。
「金筋ってどこ?」「二重刃ってどんなの?」
押形があることで、刀剣本体では探すことが難しい働きも見つけやすくなります。


では水彩刀剣はどんなものかというと。


水彩刀剣 短刀銘吉光 名物五虎退水彩刀剣 短刀銘吉光 名物五虎退 アップ

色がある!!!

なに当たり前のこと言ってんの、と思われるかもしれません。
しかしこれまで見てきた日本刀の絵が押形や鉛筆でのスケッチのみだったので、刀身や茎(なかご)にそれぞれの色が表されていることに驚きました。

上の画像の五虎退、茎を見てください。(吉光と書いてある茶色の部分)
刀身に近い側の色が異なります。
このようにハバキが装着されている部分や、磨り上げにより柄の位置が変わると、スレ・錆の具合が変わります。白黒で表現された押形よりも違いが想像しやすいですね。

次に紹介するのは一文字の太刀 銘一 号 姫鶴一文字。
一文字は激しい丁子刃(ちょうじば)を焼いている作品が多いですがこの太刀も例に漏れず。
Googleで「姫鶴一文字 押形」で検索してみると、丁子刃と呼ばれる刃文がモコモコとした線で描かれています。一方水彩刀剣では
水彩刀剣 太刀銘一 号姫鶴一文字水彩刀剣 太刀銘一 号姫鶴一文字 刃文水彩刀剣 太刀銘一 号姫鶴一文字 鋒
線ではなく色の濃淡で表されていますね。
この太刀は丁子刃という特徴の他に、乱映り(みだれうつり)と呼ばれる刃文を反転させたような模様を刀身にたくさん有しています。
今まで線でしか意識していなかった刀剣に表れる模様、色として捉えると確かにこのように見えるということに気づかされました。
マツヨイさん曰く、紙の質が良かったのでこの滲みを描くことができたとのこと。
ユラユラとした映りの表現、お見事です。

水彩刀剣 短刀銘左:筑州住 号太閤左文字水彩刀剣 短刀銘左:筑州住 号太閤左文字 アップ
短刀 銘左/筑州住 号 太閤左文字
鋒や刃縁の淡さが美しいですね。

水彩刀剣 短刀銘国光 付金梨子地葵紋蒔絵合口拵
拵えの表現もお手の物。
刀身はまずだいたい「銀色」であろううと想像できますが、拵えはそうもいきません。
金梨子地(きんなしじ)ってこんな色なんだな、柄の鮫革は白っぽいんだな、ということがよくわかります。


鉄の色は何色?


先ほど私は刀身のことを「銀色」と書きました。普通に見ると刀、鉄の色は銀色や灰色、または黒に見えると思うんです。しかし図録や刀の解説書には「鉄が青い」だの「赤い」だのといった表現がそれはもう頻繁に使われます。
いやいやいや、鉄が青いって…
私も未だに捉えきれない部分です。でも確かに鉄がそう見えることってあるんですよね。(私は水色を感じることが多いです)

鉄の色は一色ではない。絵で知り、実際の刀剣を見ながら微細さを覚えてゆく。
水彩刀剣はそれを感じる優れた手助けになるのではないかという可能性を感じました。


どうやって描くの?


ご本人がツイッターで解説してくれました。




水彩刀剣 メモ 山姥切国広
↑このメモが

こうなる↓
水彩刀剣 刀 号山姥切国広
おぉ〜!
刀身の縮尺が難しそうだなと思いましたが、こういう方法で描かれているんですね!


本のご注文はこちら


さてマツヨイさんのこれらの作品、ご本になっております!
BOOTHにて注文できますぞ!
水彩刀剣 表紙
待宵月下亭 水彩刀剣
22振の刀剣が掲載されています。
この記事で紹介したのは原画ですが、ご本ではこのように縦向きになっています。
水彩刀剣 刀無銘貞宗 名物亀甲貞宗

原画はいいぞ





ご本にするにもネット掲載するにも、やはり原画の色とは異なってしまうんですね。
今回画像を掲載させていただくにあたって原稿を写真撮影させて頂いたのですが、ブログに載せるにはちょっと暗かったので調整しました…スミマセン…原画はもっと素敵なの。

水彩刀剣 短刀長谷部国重
本には未収録の長谷部国重。炎のような皆焼に「これだよね」感。



マツヨイさんの水彩刀剣はこれからの刀剣展示で見られる機会が増えるかもしれません。
その時には、ぜひ原画の繊細な色使いを見てみてくださいね!