■日時 2018年9月29日
■場所 京都国立博物館
■入館料 前売り券 1,300円
数年前から計画されていたという今回の展示。
1997年に東京国立博物館で開催された刀剣の特別展「日本のかたな -鉄のわざと武のこころ-」以来、21年ぶりの大規模な刀剣展示であり、京都国立博物館120年の歴史上初の刀剣特別展とのこと。
平成の刀剣ブームの火付け役・刀剣乱舞-online-が2015年にサービス開始して以降、ゲームから日本刀に興味を持ち始めた層が増えました。新たな刀剣ファンが育ち賑わいを見せている最中(さなか)に開催されるというタイミングの良さ…!
展示規模から話題性まで、まさに「空前絶後」の刀剣展示であります。
キョーハク研究員の末兼さんが「空前絶後」以外の言葉も募集!とのことだったのでタイトルに「平成最後」と「千載一遇」を入れてみました
どんな刀が展示されるの?
山城伝(やましろでん)と呼ばれる京都の刀鍛冶の作品を中心に、その系譜に連なる刀匠の作品や資料が200点。うち国宝19点、重要文化財70点、重要美術品27点が含まれます。
三条、五条、粟田口、来、長谷部。
とうらぶファンの皆さんもご存知のこれらの刀派も山城伝に連なります。
山城伝の特徴をざっとあげると
- 刀身が美しく中央で反る(中反り、輪反りという)
- 肌が細かくて均一(肌が詰む、地沸つくなどと表現する)
- 細身で優美な太刀姿(上品で公家好みの作風)
展示室は三階から一階へ進む流れになっており、作刀年代も古い時代→新しい時代となっていきます。
三階の刀は平安末〜鎌倉初期の太刀で、刀身は細身で腰反り、上品な雰囲気があります。(三条・五条など)
二階に進むと作刀技術が洗練され肌の輝きが増します。(粟田口・来など)
刀は時代のニーズに応えて姿を変えます。公家の文化から武士と文化となったこと、それがよくわかるのが一階に展示されている刀たち。それまでは全体的に優等生な雰囲気だったのが一変、豪壮な姿となり刃文も派手で装飾的になります。(長谷部に注目!)
刀のことがまったくわからない人でも、この辺のことを意識して見るといいかな。
もうちょっと詳しく知りたい人は、展覧会公式HPに刀剣基礎知識のPDFがあるのでそれを参考にしてね。
会場では英語・中国語・韓国語版が紙で配布されています。
日本語版はパネルでの展示のみなので、必要な人は印刷してから行きましょう。
オススメの鑑賞方法
展示品がものすごく多いので、一本一本しっかり見ていると時間がかかる上に疲れます。
まずは三階から一階までさらっと一周。気になった作品をメモしておいて、二週目はそれらを中心に鑑賞するのがよいでしょう。
ライティングもバッチリ。中にはしゃがんで下から見上げないと刃文が見えない刀もありますが、基本的には膝・腰を屈めて見るとちょうど良く光が当たるように調整されています。展示ケースから少し離れた位置で刀身全体のバランス(姿)を鑑賞、次はガラスの近くによって屈んで刃文や肌の様子を見てみてね。
明後日、24日(土)の刀剣展見学会の予習です。日本刀の刃文。刀工が焼入れを行った際に出来る模様ですが、写真の様に赤で示した模様が刃文です。水色で示した模様は研師さんが研ぎ方に変化を付けて刃文を見つけやすいようにした刃取りです。刃取の模様を刃文と勘違いしている方、おられませんか? pic.twitter.com/NdVTYY4JAL
— 富山刀剣研究会 (@toyama_touken) 2018年2月22日
参考にいつもお世話になっている澤田先生のツイートを。
一般的には刀の白い部分が刃文と思われがちですが、正しくは白い部分の内側にある、光が当たった時に見えるラインが刃文です。
鑑賞中に疲れたな、頭が痛いなと感じたら水分&糖分補給。
館内の飲食はNG。一階物販奥のテラス席へ行きましょう。
外の飲食店を利用する場合は、再入場のスタンプを忘れずに。
刀剣乱舞に登場する刀はどれ?
前田藤四郎・博多藤四郎・明石国行・謙信景光・村正(刀)・陸奥守吉行・宗三左文字
前期の一部 10/16〜10/28
髭切
後期 10/30〜11/25
石切丸・骨喰藤四郎・信濃藤四郎・鯰尾藤四郎・村正(短刀)
通期
三日月宗近
鳴狐・後藤藤四郎・秋田藤四郎・五虎退・毛利藤四郎
次郎太刀・同田貫正国・へし切長谷部・歌仙兼定・膝丸
ものすごくたくさん展示されています。一度の展覧会で展示される実装刀は過去最多。
展示期間が少々異なるのでよく確認しましょう。
刀剣乱舞とのコラボは
まずは音声ガイド。
音声ガイドは二種類あり、刀剣乱舞ver.は税込1,000円、俳優の伊武雅刀さんver.は税込520円。
刀剣乱舞のは24話あり、鳥海浩輔さん・粕谷雄太さん・岡本信彦さん・諏訪部順一さんが担当。前期のうち10/16〜10/28の間は髭切の解説の追加あり、後期はまた別の内容の音声ガイドになるようです。
キャラクターとして、ナレーションとして両方の声でお話してくれるので、耳が幸せになります。ファンの方はぜひ。
パネル、書き下ろしイラスト、コラボグッズ
こちらは明治古都館という刀が展示されている建物とは別の館にあります。
最初の部屋に宮入法廣刀匠による骨喰藤四郎の写し、次の部屋にパネルと書き下ろしイラスト、物販は最後の部屋になります。
刀剣展描き下ろしイラストは2018年9月15日発売のBRUTUSにも載っているので、どうしても京都に行けない!という方はこちらでチェック。
展覧会初日の様子
キョーハク前着きました。列はキョーハク前の通りから伸びて智積院会館前を左折し、新日吉神社に行く道の前をも越えてます。
そして次々人が来る。 pic.twitter.com/sNaog52DNd— 刀剣訪問ブログ (@info_tkhmblg) 2018年9月28日
9月29日、展覧会初日。
9時半オープンにもかかわらす、朝5時の時点ですでに200人以上の行列ができていたとのこと。
キョーハクに着いてから展示室に入れるまではこんな感じでした
8時40分頃 三十三間堂前バス停
9時45分頃 チケット通過
9時59分 入館、音声ガイドの列へ
10時13分 音声ガイドを借りる順路の最初である3階が一番人がいて、1階はまばらという感じですね。
— 刀剣訪問ブログ (@info_tkhmblg) 2018年9月29日
3年前の展示では、音声ガイドを借りてから最前で見るための列に並び最初の刀の前に来るまで1時間半ほどかかったのに対し、今回は最前で見るにしても10分15分程度だったので体感的にめちゃくちゃ楽でしたね。
— 刀剣訪問ブログ (@info_tkhmblg) 2018年9月29日
館内すべてが今回の展示室になっているからでしょうか。たくさんの人が来場している割にはさほど混雑や窮屈さを感じることが無くてよかったです。
ただしちょっと残念だったことも。
みなさんつぶやいている通り、太刀は見やすい角度で展示されています。膝を屈めればOK。
ただし短刀……どうしてそうなった???
かなり刀が寝ていて、自分がいつも鑑賞するように光を捉えるには背伸び必須でした。むしろこれは屈んだ角度から見るのが正しいのか?と思うほど。
167cm視点。— 刀剣訪問ブログ (@info_tkhmblg) 2018年9月29日
短刀の見え方改めて確認してきた感想。
2階:粟田口は、そのままの目線だと肌はまあまあ見える。刃文は背伸びしてもよく見えない。
来派はつらい。寝すぎィ!
乱光包の乱れ刃、私には見えませんでした。
1階:かなり見やすいです。朱判正宗や平安城住光長は寧ろ屈んだほうが◎。— 刀剣訪問ブログ (@info_tkhmblg) 2018年9月29日
太刀が肌も刃文も見やすいから短刀が余計に見づらく感じるのかなと思いました。
特に二階の、肌は見えるのに刃文が見えない短刀たち。モヤモヤする〜!— 刀剣訪問ブログ (@info_tkhmblg) 2018年9月29日
初日は短刀が残念でしたね。展示角度。
物体としては見えますが、刃文が見えづらいものが多かったです。
方々から話を聞くに、前日の内覧会にてすでに短刀が見えづらいという話が上がっていたとのこと。
地震対策だとか、台風で照明を工作する材料が届くのが遅れただとかいろいろ理由があるらしいのはさておき、同じ部屋でも比較的見やすいものもあればそうでないものもあって、別の人がセッティングしたようにさえ感じる程に「なんか違う」という違和感がありました。
名物乱光包なんかはキャプションに乱刃であることが書いているにもかかわらず、肝心のそれが見えないというズッコケ。
しかしすぐに改善されました。
三日月宗近、骨喰藤四郎、膝丸、鳴狐など注目の刀剣183振りが集結!
京都国立博物館『京のかたな』を解説つき生中継!10月2日(火)19時~https://t.co/CJJatn8Fi3 …
解説者は、BRUTUS「刀剣」の橋本麻里さん×展覧会の担当研究員・末兼俊彦さんと超豪華出演者です!#京のかたな #刀剣 #ニコ美 pic.twitter.com/bBUFqkBjEx
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) 2018年10月1日
10月2日のこの放送では「見えないという話がありますが、腰を屈めれば見えますよ〜」という説明がされていました。
ほうほうそうなのか…それ試したけど見えなかったんだがな、と思いつつもう一度足を運んでみたらば展示角度が変わっているじゃないですか!(そう明言できない大人の事情もあるようです…)
声が大きいのは時に煙たがられる対象ではありますが、全国の刀剣ファンが楽しみにしていた「空前絶後の」展示ですもの。至高の作品の、その良さが見えないまま会期が流れていくのは悲しいですよね。
意見を述べたファンの方々、そして迅速に対応してくださった関係者の方々、ありがとうございます。
個人的な感想
ここまで展覧会概要を書き並べてきたので刀のことも少しだけ。長いから文字を小さく。
13太刀銘近村:映りと帽子の返りが好き
16太刀銘国永:姿よし、肌目がきれい、帽子の沸。池田家はいいものもってるなあ
大体の菊御作かっこいい特に23と26
31太刀銘久国:なんもいえねえ
32太刀銘国安:長い金筋、うるつる肌
38刀号鳴狐:改めて姿の美しさに感じ入る
39短刀銘国吉:美しい板目と姿
60太刀号明石国行:なにからなにまで最高
75太刀銘来国光:
102短刀無銘信国:相州伝風味なので単純に好み 天蓋という彫り物を初めて見た
165太刀名物膝丸・175太刀銘豊後国行平作 このふた振りが一番グッときたかしら。力強さと優美さを兼ね備えた古い時代の太刀。最高最高かっこいい
LEDライトなので、過去に見たことのある刀剣でもちょっと違って見えたのが興味深かったです。はっきりとよく見える。
私は同じ系統の刀剣ばかり見ているとちょっと飽きてくる嫌いがあるのですが、さすが国宝重文重美揃い。いつものような飽きが来なかったことに驚いています。
それでもやっぱり長谷部とか、膝丸・行平・義元左文字あたりを見ると毛色が違うし、ついでにこちらの作風の方が好みだったというのも相まってより良く見えたかなぁという感じがあります。
一階の新刀はまだじっくり見ていないので、後から追記します。
戦利品
秋田藤四郎が表紙・裏表紙になっています。
じゃん!
図録を開いたらばピラッと出てきた訂正箇所の用紙。全部で28箇所もあったことにちょっと驚き…なお初日に買った分に書かれていた訂正箇所よりもさらに2箇所増えているよう。京都国立博物館HPの図録正誤表のPDFに最新版が載っています。
新しく刷られる図録は修正されているとイイナ…
ポストカード。
1枚167円だったかな。ほしいのをじゃんじゃん買っていたら軽く4,000円近くになっていてこれまた驚き…でもほしいから仕方ないんだッ!
他にも永青文庫(東京)、佐野美術館(静岡)、徳川美術館(愛知)の図録や、本興寺(兵庫)の数珠丸等身大ポスター、福岡市博物館(福岡)のへし切長谷部ポスターなどなど、各施設のグッズも販売されています。遠かったり、タイミングが合わなくて買いに行けなかったグッズも買えるのは嬉しいですね。
さいごに
私としては実に9ヶ月ぶりの刀剣訪問となりましたが、圧巻のボリュームと最高クラス、そしてなかなか見ることの叶わぬ刀剣たちを見ることができて感激です。このために帰国してよかった!!!!
これを書いている時点で展示は前期の折り返しになりました。
本日10/16から北野天満宮所蔵の髭切が展示されますね。(公式には10/16から。フライングして10/14の夜間貸切にはすでに登場していたそうな)キョーハクのライティングでは髭切はどう見えるのか、楽しみに思いながら終わりたいと思います。
京のかたな 匠のわざと雅のこころ
場所:京都国立博物館
会期:2018年9月29日(土)〜11月25日(日)
前記 9月29日〜10月28日
後期 10月30日〜11月25日
公式ホームページ:https://katana2018.jp/index.html