講演などメモ記事

はじめに

刀剣に携わる活動をされている諸先生方から伺ったお話や講演の内容をまとめたメモ記事になります。
個人的に後から読み返したいから残しておく…それだけの記事。
できるだけ表現された言葉通りに書き起こしていますが、ケバ取り→箇条書きの形に直しているので、ニュアンス等異なる部分があるかもしれません。ご了承ください。


年月等失念回メモ

  • 刀の産地として栄える条件
    • 鉄が採れる
    • 森林がある
    • 流通手段
  • 大和伝
    • 依頼主と専属契約し直接納入しているので作者銘が無い
    • 華美を好まない寺院の美意識を反映
    • 帽子は焼詰め(千手院)
    • 湯走りや二重刃などの縦の模様がでる
    • 尻懸は小互の目の連続、帽子は掃きかける
    • 保昌は総柾目
  • 山城伝
    • 武士だけではなく公家もにも/穏やかで上品な作風
    • 三条・五条(草創期) … 直刃に小乱、縦の模様が多い
    • 粟田口・来(完成期) … 上品な直刃
    • 来国光・国次(転換期) … 相州伝を導入
      • 粟田口には相州伝の作風がない
      • 武家が好む作風を作りたくない?そして衰退した?
  • 備前伝
    • 華麗で華やか作風/作為的な模様/丁子乱れ
    • 古備前(平安後期) … 直刃に小乱
    • 古一文字(鎌倉初期) … 直刃に小丁子
    • 一文字(鎌倉中期) … 大丁子乱
    • 長船
      • (鎌倉後期) … 片落ち互の目
      • 長船(南北朝) … のたれ
      • 長船(室町) … 腰開き互の目
  • 相州伝
    • 備前・山城から名工を招集
      • 力強く激しい作風大模様の板
      • 際立つ肌模様
      • 力強くうねる
    • 草創期 … 直刃に厚い沸(新藤五国光)
    • 完成期 … 大互の目、のたれ(正宗)
    • 発展・強調期 …皆焼(広光)
  • 美濃伝
    • 実用性重視(操作性・切れ味)
    • 三本杉
    • 焼頭の丸い刃文
    • 山城伝写し
    • 輝きが鈍い
  • 樋…強度が落ちるのを最小限に保ったまま軽くする。裁断能力の向上

2017年3月12日 足利市美術館 講演:小笠原信夫氏

◉新刀について

  • 新々刀とは幕末刀のこと。明治以降にできた言葉
    • 以前は古い刀を持っているのが自慢だったがその頃は水心子正秀らの斬れる刀が良いとされた
    • 「慶長新刀」は昭和になってからできた言葉
  • 江戸時代の刀が最も差すのに適した刀
    • 堀川国広埋忠明寿は新刀はじめの人
  • 大阪の刀は刃文がきれい
    • 関東では鉄が採れなく作り方も荒っぽかった
    • 江戸幕府が開かれてから江戸に名工が移ってくる
    • 江戸の刀がきれいと言われるようになったのは慶長(1596~1615)以降(慶長…朝鮮出兵〜関ヶ原の戦い〜徳川家康・秀忠が将軍の時代)
    • 寛永、寛文、◯◯(失念)以降は大阪→江戸中心になる(寛永寛文…徳川家三代目将軍家光・四代目将軍家綱あたりの時代)※寛永1624~1644、寛文1611~1673
  • 江戸では見ていてきれいというよりも切れそうな刀もて囃された。長曽禰虎徹大和守安定上総守など
  • 登城する際は大小セットで差すというルールは寛永〜寛文の時代にできる
    • 身分が低い人もそれをまねる
    • 道中差し…農民らも身を守るため差してOK。ただし一尺3寸まで(約40cm)
    • 映画等で(時代劇)でヤクザのような人が刃渡り60cm以上の刀を持っているのはおかしい。ありえない
  • 刀はきれいに作ることよりも切れるように作ることが大事
    • 良い刀の第一条件は茎から鋒まで同じ鉄(均一な硬さ)で作る
    • 直刃はまっすぐ焼こうとしても入らない→小乱となった。中国にはない。日本的美的感覚。
    • 硬い刃を入れようとすると沸出来になる
  • 差表には名前、差裏には年記や裁断名。大阪の刀には裁断名があまりない(江戸と比較してか?)

◉堀川国広について

  • 天正18年くらいから国広の刀は存在する
  • 慶長時代の一番上手な刀工と言われている
  • 室町あたりから数打ち(大量生産)の刀が中心となるので天正の頃は京都ではあまり名工・名門がなかった。
  • 師が誰たったのか未だにはっきりしない。
  • 京都一条の堀川にいた。姓は田中?
  • 国広の作風
    • 地鉄が均一である。
    • 小沸出来。匂口がしっかり締まる。
    • 肌が立っている。
    • 鉄が荒いのと肌が荒いはまた違う。国広の地鉄はいいはず。
  • Q:国広は九州出身なのになぜ京都に定住したのか
    A:需要と供給。刀が必要とされたから
  • Q:メインの作風以外の物も作るのか?
    A:一流の刀工であれば直刃は誰でもできる。自分の技術を見せるために変化をつける。
  • Q:国広の刀で「ザングリ」とはどういうものを指すのか?
    A:主観が入るため言葉で表しづらい。「ザングリ」は「ざくざくしている」。人それぞれ。→小笠原先生自身、自身の表現も100%ではないとのこと。
  • Q:写しの中でも本歌に似ていないものは似せるのが難しくて似ていないのか、それとも刀匠の個性を出したために似ていないのか?
    A:難しい。(ここで小龍景光の例が出るが内容をメモしていない)→話を総合的にまとめた感じ、前者のよう?
  • Q:山姥切国広をこれから見に行くが、注意して見るべき点はどこか?
    A:国広は時代の変わり目の刀工。太刀ではなく刀の形(以下メモ途切れ)

2017年3月22日 ジャポニズムアカデミー半蔵門キャンパス 「各国の駐日大使に向けた日本刀講座」 講演:ポール・マーティン氏

※ほぼ全編英語での講演だったため翻訳&要約しています

◉日本刀に起源と変遷

天叢雲剣、七支刀、七星剣などを日本神話のエピソードも交えて、神代の宝剣から紹介

天叢雲剣/アメノムラクモノツルギ

スサノヲに退治された八岐大蛇の尾から発見される。スサノヲから天照大神に献上され、のちに天孫降臨の際にニニギノミコトに託される。ヤマトタケルの東征のエピソードも紹介される。(別称:草薙剣。三種の神器の一つで、現在熱田神宮の御神体として祀られている)

七支刀/シチシトウ、ナナツサヤノツルギ

Korea(百済)から伝来したもの。特異な形状について、通常使用ではなく、儀式用と説明。

・中国の影響を受けていた日本だが、10世紀後半?(平安時代中頃)から日本独自の文化になってゆく。かなや湾刀、焼物など。

・毛抜形太刀は柄が握りにくい

・大包平は平安時代のtipical(典型的)な姿

・太刀は抜くのは3ステップ。Hold、傾ける、抜く。刀は2ステップ。

◉刀の見るところ

  • 反り(curve)  時代で変化する
  • 肌(pattern)   どこで作ったのかがわかる
  • 刃文(hamon)  手書きのよう。作り手のクセがでる。人間のように一つとして同じ刀は無い
  • 時代
    • 南北朝 なぜ大きな刀になったのかわからない
    • 応永  昔の姿を模したもの。過去の良品のコピーは良い。
    • 慶長   big鋒、南北朝shapeのlooking back、shorter(南北朝の姿の振り返り、それよりも短い)
    • 寛文   平和な時代。反りが浅くなる。道場が増える。木刀に近い。反りが深いと突きが難しい。
    • 元禄  鎌倉初期〜後期のlooking back. 太刀っぽい。出版が盛んでその時流行っていた源平ものなど、そういうスタイルが求められたのではないか?(というポールさんの考え)
    • 幕末  黒船来襲。heavyでstrongな刀。龍馬や海舟は西洋のテクノロジーを理解し取り入れ、迎え撃とうとしていた。幕末刀はnew new sword.(新新刀

◉刃文について

・玉鋼は成分が安定していないから折り返し鍛錬する。しかしそれでも別の成分が混ざっている。

・古刀の刃文は土置きをしたのかどうかわからない(?)

・微粒子(←メモの字がちょっと定かではない)により足や葉などができる。

・働き=activity、

・沸=boiling

・匂=flavor

◉その他

・結婚するときの守り刀の拵えは竹。なぜならば竹は冬は重い雪を乗せていてたいへん。しかし春になると雪は溶けていく。最初は苦労もある結婚生活が、時とともにだんだん慣れてゆくという意味も込められている。

・研師は新しい刀も古い刀も研ぐ。形が変わらないように、別の流派のようにならないようにたくさん勉強しなければならず、10年ぐらい修行する。

2017年4月22日 福井市立郷土歴史博物館 講演:刀身彫刻・装剣金工師 木下宗風氏

隅谷正峯刀匠の七星剣象嵌→現代は刀身彫刻の一種とする。象嵌も刀身彫刻とする。上古刀などかなり古い時代からある

  • 一番多い彫りは樋
    • 最大の理由は重量軽減。100gぐらい軽くなる
    • 光の反射が多くなりより美しく見える。そのため短刀などにも彫られるようになる。
    • 添え樋は美的
  • 角留め(かくどめ)は少ない
    • 丸留め(まるどめ)はトンボ銑でもできるけれど角留めはタガネが必要
      トンボ銑…とんぼせん。鉄を削るための道具。左右に持ち手があり形がトンボに似ている
    • 手間がかかるため角留めがされている刀は良い刀が多い
    • トンボ銑の樋と違い彫師の樋は刀が研ぎ減ってもかっこ悪くならないように彫ってある

素剣

密教における仏様の象徴
一方の刃で悪を断ちもう一方で煩悩を断つ。
彫りは「素剣に始まり素剣に終わる」

護摩箸

護摩木を掴んで火にくべる。成田山新勝寺でそれを見たことがある。

  • 俱利伽羅龍
    口を開けて剣を飲み込まんとする。この龍も不動様の遣い。
    三鈷剣は三つの外道、それを飲み込む。
  • 行の倶利伽羅 備前彫り
  • 草の倶利伽羅 山城と相州はカクカクしたかんじ。備前はトゲトゲした唐草龍
  • その他の龍
    玉追い龍、見返り龍など

天下泰平時代の彫り

和歌、松竹梅など

刀身彫刻の意味とは

刀は武器であると同時に権力の象徴でもある(上古刀の頃は誰が誰に送ったかとか)

武士の時代:信仰の対象を彫るようになる:お守りとしての側面、より一層の加護

江戸時代:信仰とは別に主義等が彫られるようになる

似合うデザイン、似合わないデザイン

縦長の彫りがバランスよく似合う(キャンバスがそうだから)
倶利伽羅とかは長さが丁度よい。龍は長さを調節できる(誰も見たことないしね!)

刀身彫刻のタイミング

白鞘を作る前。ハバキを作ったあと。彫刻をすると刀が曲がる。梵字一つくらいでは平気だけど龍は曲がる。先に鞘を作ると反りが合わない。
そして研ぎをする前。研ぎのあとに彫刻をするとフチが曇る

和彫り

手前に引きながら彫る。陽彫りでは金や銀はいいけれど、鉄は硬くて×。

刀工彫り(自身彫り)と金工彫り
刀工彫りの方が味があり全体的に統一感。しっくり。金工彫りは上手いけど刀に勝ってしまう。

注意すること

一にも二にも失敗しないこと。不測の事態もあるが、それ・をリカバリーする技術。

大和伝・美濃伝は樋以外の刀身彫刻が少ない!なぜ?

山城・備前・相州は彫りやすい。福岡一文字はとても彫りやすかったとのこと。気持ちよく彫れる。
相州伝は硬そうに見えても彫りやすい。皆焼の中の彫りもある。
大和伝はとっても硬い!鎬が高い。樋を彫るのすらいや。

現代刀も玉鋼だけを使ったものは硬い。心が折れてくる。無垢でなく、おろし金も使ってもらう。

刀に似合う刀身彫刻とは

マッチしている。彫りを外した姿を想像してみた、彫りがあったほうがグッドというのが良い。

仏様・人物・動物は目がすべて。
刀身彫刻を見たときに惹かれるものがあったら共鳴している。

不自然なとこに入っている彫りは傷隠しの場合もあった。後彫り。

刀身彫刻の今後

ステータス性、お守り。

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