はじめての日枝神社とただ一振りの国宝則宗

国宝の一文字則宗を所蔵・展示していることで刀剣界隈では有名な東京の日枝神社。
実はまだ行ったことがなかったので、ちょうど上京するタイミングで則宗が展示されていたので行ってみました。

概要

会期:常設・2か月ごとに展示替え
会場:日枝神社宝物殿
ホームページ:https://www.hiejinja.net/
備考:入館無料・館内撮影禁止
訪問日:2024年1月16日

アクセス

今回の目的地は赤坂の日枝神社です。日本橋にも日枝神社がありますが、そちらではないので気を付けて。土地の高低差や砂利があるので、スーツケースなどの大きな荷物がある方は予め駅のコインロッカー等に預けて身軽に動けるようにしておくのがよいです。詳しく調べられなかったけど、境内にや宝物館に預けるところはなさそう。飛行機の手荷物預け可能なサイズの小ぶりなスーツケースを引きずりながら歩きましたが、やはりちょっとした段差等で手ぶらがよいなと感じました。

赤坂の日枝神社は地下鉄の最寄り駅が4つ。
東京駅からすぐに行くことができます。詳しくはHPのアクセスマップを参照
素直に丸の内線に乗ればよいのに、なぜかその日はわざわざホームが離れている千代田線に乗ってしまったので国会議事堂前で下車。日枝神社にはメインの入口が二つあります。国会議事堂前からはエスカレーターがある山王橋側の入口が近かったのでそちらから入りました。残念ながら写真を撮ることを失念…ビル群のど真ん中に巨大な鳥居、そこから長く伸びるエレベーター。高所恐怖症の人は後ろを振り返ってはダメですぞ。

日枝神社_鳥居

こちらが正面の門。階段のみです。

日枝神社の鳥居は屋根のようなものがついています。「山王鳥居」というここ独自の形で、これで仏教の胎蔵界・金剛界、神道を表しているのだとか。

日枝神社_門

境内に足を踏み入れると車車車䡛轟…黒塗りのアルファードアルファードアルファード、ベンツ、フォード、レクサスになんかわからないけど外車や高級そうなセダンがたくさん。おおお、田舎でアルファードといえばヤンキーのイメージですがここはTOKYO、しかも都心…これはきっとおかねもちか会社でお参りに来たやつだな。

そんな事を思いながら境内に入るとみっしりとたくさんの参拝客が。単純に人が多いだけなら今まで明治神宮や熱田神宮等の有名な神社に三が日中の初詣をしたことがありましたが、それとはまったく雰囲気が異なりました。なんだろう?
本殿の横に見えるプルデンシャルタワーに肩で風を切って歩くいくつものサラリーマン集団。人混みは平気なタチなのに忙しない、ぜんぜん落ち着かない。こんな神社はじめて!

日枝神社_本殿

まずはご挨拶からということで本殿へ。
ソワソワした気持ちのままお参りをしましたが、まったく集中できませんでした…
ちょっと気分変えたいなー。いったん刀を見て落ち着こう。ということで目的の宝物殿へ。

宝物殿

日枝神社_宝物殿

境内に喧騒とは打って変わって、門の外はだいぶ静かでした。一安心。左右の車と比較してもわかる通り、こぢんまりとした宝物殿です。靴を脱いでスリッパに履き替えて中に入ります。

日枝神社の刀剣は2か月おきに展示替えされます。HPにてスケジュール案内されているので出かける前にチェックしておきましょう。

館内の壁三面と中央の台が展示ケースになっています。壁面ケースの前面に太刀5振と薙刀一振、後面に梓弓、山王権現の扁額、獅子頭、能面、絵画など。中央の展示ケースには書状がありました。様々なものが展示されているので照明は弱め。刀全体の姿は見やすいですが、刃文等を見るには腰を落としてみる必要があります。

今回展示してあった刀剣のリスト(順番:展示室の右側→左側)

  • 太刀 銘 豊後国行平 附糸巻太刀拵 重要文化財
  • 太刀 銘 備州万寿住右衛門尉吉次作 附糸巻太刀拵 重要文化財
  • 太刀 銘 則宗 附糸巻太刀拵 国宝
  • 太刀 銘 高包 附糸巻太刀拵 重要文化財
  • 太刀 銘 定利 附糸巻太刀拵 重要文化財
  • 薙刀 無銘 当麻 重要文化財

入館してぐるっと見回し、目当ての則宗を探しました。
キャプションを読まずに当てたかったの。
刃文が見える位置まで近づくとキャプションが見えてしまうので、姿のみでの当てっこ。

うーん。並んでいるのみんな長い、太刀だ。どれもかっこいい…けど左側にあるの(定利)はなんか違う。右の一番最初のやつ(行平)好みだなー…けど違う。
よく考えてみたら一文字則宗と極められている作品をそんなに見たことが無いんですよね。お目にかかる機会がない。記憶にあるのは大好きな岡山県立博物館の重要文化財の則宗と、京都国立博物館に寄託されている愛宕神社の二つ銘則宗。
いわゆる一文字の特徴である「刀身全体に華やかな丁子刃を焼く」とは異なる小乱れ、小丁子。踏ん張りついて小鋒。古雅な趣。鋒にちょっと特徴を感じていて、伏せ心に見えるようで見えなくて、気持ち上を狙っているイメージ。

鋒…真ん中にある太刀だ!

正解ワーイ!パチパチパチパチ だけどあれ?想像していたより反りが強く見える??

太刀 銘則宗 附糸巻太刀拵 国宝

長さ 2尺5寸9分(78.5cm) 反り 8分5厘(2.7cm)
数値だけみると反りが強いとも弱いともなく、おそらく普通。
他の太刀らの数値を見ても長さ77.2~79.2cm、反り2.5cm~2.7cmでだいたい同じくらい。
腰反りではあるけれど、もう少し中央側で反っているように見えます。数ミリの違いや反る位置で、与える印象が大分違うのかもしれないと思いました。
「則宗」の銘字がよく見えます!細い!けどうまい。茎雉子股足と普通の中間。細い。目釘孔一つ。刃文は見づらかったので諦めました笑

キャプションが特徴的だったので紹介したいと思います。

正保三年(1646年)6月6日徳川徳松君(後の五代将軍綱吉)初宮詣の折奉納されたもので附属太刀拵は江戸初期の製作である
則宗は鎌倉初期の刀工で備前国福岡一文字派の祖で後鳥羽院御番鍛冶の一人である細身の腰反の高い上品な姿は平安時代の趣を伝え小丁子に小乱という古雅な出来である 則宗現存はすこぶる稀でこの太刀はその白眉である

日枝神社 宝物館のキャプションより

すべての展示刀剣に、いつ誰から奉納された刀剣なのかがしっかり書かれていました。

そわそわな気持ちと見ることの難しさで、あまりしっかりと鑑賞ができていないですが、メモしておいたものを載せていきます。

太刀 銘 豊後国行平 附糸巻太刀拵 重要文化財

長さ 2尺6寸1分(79.2cm) 反り 8分6厘(2.6cm)

やはり裏銘。小鋒。踏ん張りついて真ん中ほどから細くなり始めて、特に鋒側が細いので、全体的に細身の太刀に見える。元幅はきっと尋常。鋒やや伏せごころ。よく見る行平の特徴との一致を感じました。隣の青江の太刀と長さ、反りともにわずかしか変わらないのに、青江のほうががっしりめに見えるのはふんばりがついているせいかな?

太刀 銘 高包 附糸巻太刀拵 重要文化財

長さ 2尺5寸4分(77.2cm) 反り 8分9厘(2.7cm)
展示作品のほとんどに伏せ心を感じるけれど、これ伏せごころではないかな。
他の太刀たちにくらべて全体的にややがっしりして見えました。1cmだけだけど、一番長さが短い作品。

「どれも同じような長さ、反りで、時代も近いのに随分と姿が違って見える」というのが今回の鑑賞で面白かった点でした。6振のどれもが一目で名刀とわかる力強さが漲っていて、同じ空間にいられること自体が楽しかったです。日枝神社には31の刀剣が保存されているとのこと。則宗目当てだったけれど、これは他の刀も見ないとですね。絶対にまた行こ。

「ぜんぜん人が来ない」「空いている」の噂通り静かにゆっくり鑑賞できます。私の滞在時間の中では刀剣ファンだとわかる方々が数名いらっしゃいましたが、スムーズに譲り合いが出来る方ばかりでした。

日枝神社_授与所

刀剣鑑賞を終えて心が落ち着き、再度本殿へお参りへ。
「今年も刀剣訪問ブログをたくさんできますように」
「刀剣訪問をたくさん」ではなく「刀剣訪問ブログをたくさん」したいのは、見るのはもちろん、書き終えることまでしたいから。
サラリーマンたちはいなくなっているけれど、着いた時よりも混んでいる授与所。すごいところだ。

国宝の則宗を見ていなかったことが実はコンプレックスでしたが、これにて解消。また一振り、則宗を記憶できてうれしいです。
そういえば則宗ってあといくつ現存しているのでしょう。
岡山、京都、三井記念美術館のは見た。見たことがないのは山口県の忌宮神社所蔵・伝無銘則宗と、兵庫県の松帆神社蔵・銘一。ほかはないの?もしこれしか無いのならば。
則宗、いつかきっとコンプリートする。
新たな目標が決まったところで「はじめての日枝神社とただ一振りの国宝則宗」をおわります。

山鳥毛よりも目を奪われた岡山県博の則宗との出会い

■日時  2016年5月14日 ■場所  山鳥毛:岡山県立博物館      ニッカリ青江:香川県立ミュージアム ■観覧料 300円+410円 ------------------ ■旅行日程 2016年5月13日〜5月15日 ■東京―岡山・[…]

日枝神社_門
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