京極正宗と白山吉光、そしてもう一度太郎作正宗を見たくて金沢を訪れた話

「いつか太郎作正宗を再チャレンジしたい」「京極正宗、刀剣乱舞実装直後に本体展示なんてタイミング良すぎ」「なんだかんだで白山吉光見てなかった」「前後期で見たい刀が分かれる……だと?」

金沢 行くしかなかった

金沢。日本海側、石川県の都市。東京在住時と比べて青森からはどこに行くにも遠くなることはわかっていたけれど、日本海側に関しては想定以上でした。とはいえ見られる機会が少ない刀、かつそれが見たことがないのであれば。遠さなんて知らない。Just focus on KATANA.

目的は展示される4振りすべて。楽しみすぎて毎月公開している刀ラジオで予習回をお送りしました。

展覧会概要

「皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌めき―」
美術館公式ページ展覧会特設サイト展示品リスト
2023年10月14日~11月26日
前期:10月14日~11月5日
後期:11月7日~11月26日
石川県立美術館(石川)
美術館公式ページ展覧会特設サイト展示品リスト

撮影不可・再入場不可

京極正宗(前期のみ)・若狭正宗(後期のみ)・太郎作正宗(通期)・白山吉光(通期)
※この展覧会は石川県立美術館・国立工芸館の二館で開催されますが刀剣は石川県立美術館で展示されます。刀剣乱舞コラボとして京極正宗のパネル展示とクリアファイルの販売があります。>>詳細

展覧会概要の通り、前後期で見られる刀が異なります。全部見たいから両方行きたい!
しかし青森↔金沢を何度も往復するのは難しいので、前期の最終日・休館日・後期の初日に行けるように二泊三日で旅程を組みました。展示替えで一週間も空く展覧会では無理だけれど、今回のような1日だけ休館日の時はよくこの方法で遠征しています。

石川県立美術館

石川県立美術館、国立工芸館、県立歴史博物館などの文化施設が集まっている広場。出店がたくさんありました。

訪れるのも三度目となれば行き方や雰囲気もわかっているもの。
金沢駅よりバスに乗車し「出羽町」バス停から徒歩5分のルートを選択。「広坂・21世紀美術館」バス停で下車するルートもありますが、そちらは坂道を上ることになります。歩けるけれど、スーツケースを持っているときは可能なら避けたいかな。

出店のハヤシライス

6時台の新幹線で出発し、到着したのはお昼ごろ。腹ごしらえを済ませたらいざ美術館へ。

長らくお迎えできなかった白山吉光を出発前ギリギリにお散歩シールでお迎え。このツーショットが撮りたかったんだ。

展示室の様子

特別展の最初の部屋に刀はありました。絵画や書もあるせいか室内は全体的に暗め。刀にはそれぞれピンライトが一つずつ当たっていました。
刀の並びは順路順に太郎作正宗、京極正宗、白山吉光。後期は京極正宗の位置に若狭正宗が置かれます。
キャプションは文字が大きくどの作品もシンプル。刀は来歴が中心で、刀そのものの特徴は書いてありません。なので勉強したい方は事前に図録やインターネットで調べておく方がよいですね。

ちょっと気になったのは刀掛けに掛けられている布。
私の身長162cmで正面から見ると、短刀と剣の刀身3分の1ほどが布で隠れてしまいます。近づいて上から覗き込むようにすると隠れる面積が減ります。照明が当たるところを探すと同時にこちらも探ってみるのをおすすめします。
X(旧Twitter)上のみなさんの感想によると、何度か展示角度が変わっているよう?
ここでの感想はあくまでも11月5日と7日に私の目線から感じたものになります。ご了承ください。

刀 無銘 名物太郎作正宗 鎌倉時代14世紀 国宝 前田育徳会所蔵

事前に「志津っぽい」と聞いていたことに納得を覚えるしっかりとした身幅。ひと目で大磨上げだとわかる姿。鎬幅いっぱいに棒樋、それを一つある目釘孔あたりまで掻き流す。雄々しい。かっこいい系の正宗。強そう。実際に戦で使用された刀で、兜に打ち下ろした際の刃こぼれも確認することができました。
暗めの地鉄、匂口が溶け込むような淡さののたれた刃文。背伸びして上から覗き込むと、フワッとした丁子足が現れてきれいでした。強そうな姿なのに刃文は繊細なギャップが好き。

フワッとしたところに所々金筋。この刀結構あちこちに金筋が見えてアクセントになっていました。砂流しはある?けれどもあまり目立たないというか、いつもの正宗のイメージよりは無いような気がします。帽子はユラユラっと掃いて炎みたいでかっこいい(火焔帽子ではない)。鋒の最先端にも金筋がニョロニョロ。
正宗らしい沸がみっしりついた肌は、うっすら板目が見えるくらい滑らかでした。

刀 無銘 名物若狭正宗 鎌倉時代14世紀 皇居三の丸尚蔵館所蔵

後期のみ展示の若狭正宗。短刀ではない正宗を比較したいので先にこちらの感想を。

太郎作正宗がフワッと控えめな刃文だったのに対し、こちらは遠くからでも乱れ刃なのがよくわかるコントラストでした。のたれ?直刃?を基調に、互の目の山ひとつを一定の間隔でポンポンと焼いています。互の目の焼き頭に黒い沸粒(荒沸)がぽつぽつ。鋒はやや延び気味。帽子はしっかり乱れて焼き詰め。物打ち付近、平地から樋にかけて荒沸のかたまりが2ヶ所ありました。刃文の見えやすさや荒沸等で、刀を知らない人にも模様が見えて楽しみやすい刀だと思います。

照明の具合なのか鉄の色なのか。太郎作に比べて全体的に明るい地鉄に見えました。沸粒の反射?太郎作よりも地沸のミシミシさを感じると同時に、肌全体がヌラヌラ輝いていて肌の模様が見えづらかったです。

若狭正宗も大磨り上げでややがっしり系の正宗かな?華やかさもあります。中務正宗に雰囲気が似ているかも。反対に上品とか優等生な雰囲気を感じるのは石田正宗や城和泉正宗(津軽正宗)ですかね。

▲参考:中務正宗。この刀を見たときの感想「正…宗……?正宗にしては体配が南北朝っぽい、時代が下るようだなと思いました。やや身幅広めで中鋒伸びる。大磨上げ。」
▲参考:城和泉正宗(津軽正宗)。長さはありますが、反りが強く鋒側が少ーーーしだけ細くなり優美さがあります。

短刀 銘正宗 京極正宗 鎌倉時代14世紀 皇居三の丸尚蔵館所蔵

※画像はパネルを撮影したものです

京極正宗_刀身全体

京極正宗_茎

京極正宗_鋒

銘字がカワイイ!京極正宗は珍しい銘ありの正宗。まず目につくのは主張の強い地景。一瞬鍛え割れかと思いました。刃区(はまち)から刀身中程あたりにハッキリと強くうねった線が見えます。
振袖茎のせいか古風様。刀身は細身。姿だけを見ると行光や新藤五国光のよう。同時に頭に浮かんだのは包丁正宗。茎も身幅もたっぷり太く、同じ正宗の短刀でも対照的な姿です。
ハバキで隠れて見ることができませんでしたが、研ぎ減りなのか刃区・棟区(むねまち)の境がほぼ無いくらい細くなっているようです。

沸の輝きは繊細。最初はパウダーっぽいと思ったのですが、よく見るとパウダーの下に更に沸を感じました。Xでポストした最初の感想はこちら(雪国民仕様)。

氷に近くなった雪の上に、更にぱやっと雪が乗った時のような輝きでした。
圧雪された雪が氷のようになってきらきら。その上に更に雪がふわっと乗ると上下の雪で輝き方が異なるんです。
パウダーっぽさを感じる地沸の奥にも輝きが見えるような………沸の深さを感じるような肌だったということでした。

それと、鉄の色を見るのは得意じゃないので照明の加減かもしれませんが、青い刃でした。

刀剣男士の京極正宗と比較してみる

肌の繊細さや姿の華奢な具合がキャラクターとものすごくマッチしています。解釈一致。
しかしあの主張の強い地景…そして刃文も結構動きがあるんです。おとなしくはない刃文。

深窓の令嬢然としている京極ちゃん。内面は結構クセがある?意志の強さやたくましさを感じました。

京極正宗_刀剣男士パネル

剣 銘吉光 白山吉光 鎌倉時代13世紀 国宝 白山比咩神社所蔵

実はこちらも初めて見る刀剣。粟田口吉光の国宝剣です。
てっきり立てて展示してあるのかと思っていましたが、鋒を右側にして寝せて展示されていました。鎬筋より手前の刃は鑑賞可能ですが、奥には光が当たりません。アキラメロン
正宗たちは背伸びをした状態でよく見えましたが、こちらは屈む姿勢が正解。

澄んだ地鉄とスッキリと締まった刃縁の景色を見ることができます。澄み具合は四振り中1番じゃないかな。
大きさは京極正宗と同じくらい?刃長は白山吉光が22.9cm、京極正宗は23.0cmとのこと。なるほど。
この剣も布に隠れた面積がまあまああり、最初はイマイチ全体が掴めなかったのですが…じわじわと吉光の端正さ、優等生っぽさが見えてきました。短刀よりも静かで力強いかも。
そしてこの子は本当に鎌倉時代の作なの?名刀って漲っていますね。

▲参考:博多藤四郎。白山吉光の匂口もこのようにピシッと締まっていました。

刀剣鑑賞を始めてから正宗を見る機会は何度もありました。しかし、わかったかも→やっぱりわからん→わかったかも?→ワカラーーーン!を繰り返していました。他の刀工のように作品に共通するナニカを掴めないでいたのです。
相州伝が好きで、国光・行光・貞宗は「あーソレだな」とわかるし、近いものを感じる則重や左文字もわかるのに。篭手切正宗ってホントに正宗か?なんで武蔵正宗はあんな姿なの?もう!正宗ってなに?!ギーーーーー!!!!という具合。
太郎作正宗と若狭正宗を見ながらそんなことをモヤモヤと思い出しつつ、正宗のにおいを感じられる刀工の刀たちから、それぞれの特徴を消してみました。
一見南北朝の刀剣のような力強さを感じても、左文字だと思わないのは体配の違いのせいかな?貞宗とは肌や刃文がなんか違う。志津は?郷は?……とそれぞれ見ていくと、そこに残った、どれでもないものが正宗なのかしら?いや考えてみれば正宗自身が正宗十哲あたりの特徴をすべて持っていてもおかしくないかも?試行錯誤の結果があの作風のバリエーションだとしたらめちゃくちゃ熱いな。

あれ?正宗について考えるの楽しくなってきたかも。
来年頭には正宗十哲の展覧会があるからそこでまた考えよ!

これが名刀POWER。あとやっぱり相州伝が好きだから。もっと見たい。


前期最終日は日曜日でしたが、物凄く混んでいたわけではなかったです。刀剣の前がスカスカになることもよくあったので、タイミングを見ながらたくさん鑑賞することができました。後期初日も同じような感じ。
しかし3ヶ月ぶりの刀剣鑑賞はエンジンがかかるのが遅かったですね。前後期それぞれたった三振りにもかかわらず、掴んだ感を得られるまでに時間がかかったのがちょっと悔しいなーと感じたところです。ぐぬぬ

展覧会第二会場の国立工芸館

『刀剣乱舞ONLINE』宣伝隊長「おっきい こんのすけ」石川県観光PRマスコットキャラクター「ひゃくまんさん」のコラボ撮影会

イベント詳細ページ>>https://ishibi-ncm2023.com/topics/07.html

11月5日は「おっきいこんのすけ」と石川県観光PRマスコットキャラクター「ひゃくまんさん」との撮影会イベントが開催されていました。11時・13時・15時の3回。たまたまスケジュールがちょうどよかったので、思いがけず参加することができました。ひゃくまんさんとお揃いのヒゲ装備のこんのすけ。初めて見た。カワヨ

観光もちょっとした

兼六園

松の枝ぶりが立派だなー
前回、前々回は春ごろに訪れたので雪釣りの松を見るのはこれが初めて。

金沢城公園

お花でできたひゃくまんさん。かわいい

金沢城公園を訪れたのはこれが初めて。兼六園とあわせてとても広いですね。11月なのに最高気温27℃(どういうことなの??)という半袖でも寒くない気候だったのでのんびりお散歩できました。

定番の観光地・近江町市場。ここも今回が初めて。ようやく来れたー!!

食べたもの

ぱふぇというものを ふだんあまりしょくさぬゆえ こういうときがちゃんすなのじゃ
映えそうなケーキを選んだのだ。動画を小さくする方法が未だにわからない^o^

石川県立美術館にあるカフェ「ル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWA」今回初めて入りました。噂通りの待ち時間かな。

青森でなんぼでも食べられるというのに、美味しそうだから頼んでしまったアッポーパイ。おいしかった。

こちらもル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWAにて。

回るタイプのお寿司屋さんで食べたセット(割安)

三陸の海産物で鍛えられし我が舌の判定はッッ──── 優ッ!
知ってた。前来た時もおいしかったし、富山も福井も美味しかったもん。ホクリク メシ ウマイ。


以下はあんまり面白くないかもしれない話。

今回の遠征はややイレギュラーだったので反省として、それから「そんなこともあったよね」とあとで振り返りたいので書き残そうと思います。気が済んだら消すかも。いつもポジティブな話ばかりじゃ味気ない。刀剣はまったく関係ないので興味の無い方は読み飛ばしてください。

映画館に行って失敗した

物凄く楽しみにしていたホラー映画の続編、地元ではまさかの上映館ナシ。悲しみに暮れていたところ金沢では上映されていたので二日目に映画館へ行くことにしました。事前にシアターの一番良さそうな席を予約し、上映一時間前には映画館に着いてしまうというワクワクっぷり。
上映が始まると…自分の横に並んだ5人の高校生は始終話をする、スマホを見る、バイブ音を鳴らす、わざと大きい音を立てて足踏みをする。

あー終わった。無。

誰かと旅行をするということ

他人との旅行って難しいですよね…『自分で調べて旅行する人と調べない人が一緒に旅行して険悪になる』という典型的なパターンになりました。

私は刀剣、向こうは現地の友達と会うので基本的には別行動。二日目のみ互いにフリーだったので一緒にどこかに行こうか?ということに。市内、加賀温泉郷、能登半島や白川郷への遠出などを提案してみましたがどれも採用にならず。もう金沢で適当に過ごすでいいやというので、私も自分の予定を共有していませんでした。当日になって「〇〇は何時から?」「XXはどうやって行くの?」「△△線ってバスはXXを通るの?」と私が行く予定のない施設について質問されたので「知らん。自分で調べて」と返答していたらブチ切れられちゃった。why?

What is your smartphone for? I’m not even a local

ちゃんちゃん

おわりに

そんな感じで、若干のモヤモヤや不完全燃焼があった遠征ではありましたが。2015年、2016年ときて7年ぶり3回目の金沢刀剣訪問でした。

はじめての金沢

■日時 2015年6月6日■場所 石川県立美術館(石川県金沢市)■入館料 1,000円■交通費 12,300円  内訳 6,300円(新宿→金沢)      200円(金沢駅→美術館)      300円(その他)     5,500円([…]

二度目の金沢

■日時  2016年5月20日■場所  石川県立美術館■入館料 290円------------------■旅行日程 2016年5月20日〜5月21日■東京―石川交通費 8,900円■宿泊地・宿泊費 加賀温泉郷 めい想倶楽部富士屋旅館 […]

7年ぶり…だと?随分前ですね。そしてすごい。こんなに刀剣遠征続けているとは思わなかったな。
厳密に言うと初めての刀剣関連遠征は武庫刀纂を見に水戸へ行ったことなのですが、刀剣そのものを見るための遠征は金沢が最初の土地なんです。

一度目に訪問した時の太郎作正宗を見た感想は

太郎作正宗→刃明るめ、棟は暗い、太さ全体的に均一太め

これだけ。へーその時は刃が明るく見えたのね?ホントか?(身幅)太めというのは刀剣の知識がなくても感じることなのね。

刀を見に行くためだけにお金をかけて遠出するってどういう事なの…?と自分でも困惑しつつ始めた刀剣遠征。いつもの「好き」とは違う、本当に刀が好きなのかどうかわからない。けど知りたい。どうして?という気持ちを何年か抱え、今も冷静になると何でこんなに刀見に行っているんだ?と疑問に思います。

I’m probably possessed.

とりあえずフられるまで。さて正宗十哲展を見るためのスケジュールをおさえなきゃ。
旅は続きます。

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