私が見たものは刀剣だったのだろうか?日光二荒山神社の御神宝展を見に行った話

二荒山神社中宮祠 入口

訪問日:2023年7月14日・15日

いつか行ってみようと思っていた日光二荒山神社の宝物館。
東京に住んでいるうちに行けば距離も近くアクセスも楽だったのに、いつでも行けそうな雰囲気だったのでズルズルと時は経ち。この度刀剣展が開催されるということで、ようやく行くことの決心がつきました。

会期は2023年6月15日~2024年5月15日と長期。いつ行こう?秋は混むからやめとこ。夏休みもなんか避けたい。冬?寒そう道路怖い(北国民の発想)。じゃあ今しかないじゃん!7月4日に計画を立てて、すぐに切符と宿とレンタカーの予約をしました。

目次

アクセス

二荒山神社よりも日光東照宮のアクセスを検索する方が情報が出てくる…かな?
今回行くところは二荒山神社の中宮祠。地図を見るとよくわかるのですが、二荒山神社本社や東照宮があるエリアよりもさらに山の方、奥日光というエリアにあります。

JR日光駅
JR日光駅 白とピンクでかわいい駅舎 曇り空である

まずはJR宇都宮駅・JR日光駅・東武日光駅のいずれかを目指しましょう。
東北各県からはJR宇都宮駅→JR日光駅。
東京からも同じでOKですが、JR特急日光(新宿↔東武日光)やスペーアけごん(浅草↔東武日光)等の特急も出ています。
日光駅or東武日光駅に到着したら、その先は中禅寺湖行きのバスに乗り換えます。

私の場合、地元→(仙台で各停の新幹線に乗換)→宇都宮駅→日光駅→中禅寺温泉行きのバスというルート。今回は紅葉シーズンの渋滞で有名ないろは坂を車で運転してみたかったので、バスではなく日光駅からレンタカーにしました。

※ちなみにバスの方がレンタカーよりかなり安く済みます。バスは片道1,250円程度。今回のレンタカー代はコンパクトカー2日間で14,910円。八戸→宇都宮の片道新幹線代より少し高いです。でもいろは坂を自分で走ってみたかったんだよね。

今回の愛車。はじめての栃木ナンバー!わー楽しみ

初めての葛折りカーブ。ちょっと不安

当日。朝寝坊をすることなく順調に出発したにもかかわらず、日光線の人身事故により日光駅で2時間の足止め!ピンポイント過ぎる…!この理由での遅延が都会ってかんじ!もうッ!!(田舎では人身事故での遅延をなかなか聞かないので)
旅行期間中の天気予報は曇りと雨を行ったり来たり。しかし遅延のおかげで日光駅到着時には雨が弱まっており、そのあとすぐに雨が止んでしまったので、傘をささずに神社や周辺を歩くことができました。ラッキー

二荒山神社宝物館

展覧会概要

展覧会名:特別展 名刀 御神宝
会期:2023年6月15日~2024年5月15日
会場:日光二荒山神社中宮祠
展覧会案内ページ:http://www.futarasan.jp/houmotsukan/
図録通販ページ:https://www.futarasan.info/houmotsukan/
ほか:入館料 大人 1,000円 / 小中学生 300円(割引チケット購入ページ)、撮影禁止

男体山頂鎮座1240年・本社御本殿大修理工事竣功
栃木県誕生150年・宝物館開館60周年記念
179口もの多数にのぼる当社所蔵の刀剣類─うち国宝太刀2件、重要文化財16件(太刀10件、剣1件、薙刀5件)を含む質量共に卓越した優品を一堂に公開

http://www.futarasan.jp/houmotsukan/
二荒山神社宝物館

刀剣たちはどれも見やすい角度、ライティングで展示されていました。
祢々切丸のように尺が長く、もともと下半分に焼きをいれていない刀剣には、その部分はライトを当てず、刃文があるところにのみ照明を当てているのがおもしろいと思いました。つまりここではライトが当たっていないところは無理して見ようとせず、見えるところを見ればいいのだとわかります。
キャプションはしっかり長め。刀の特徴がすべて書いてあるので勉強したい人向け。
なんでしょうね、初めて刀剣博物館や熱田神宮に行ったときのような気分でした。

目録はありますが、展示品のすべてが載っているわけではなさそうです。
また今回展示していた刀剣たちも、所蔵のすべての刀剣ではなく一部のよう。
展示替えをする(3回程度、次は12月を予定)と伺ったので、おそらく目録の刀剣は通期で展示、目録外の刀剣は展示替えで入れ替えになるのかな?

目録に載っているもの=内)、目録に載っていなかったも=外)と表記しています。
(長いのでとりあえず画像で載せているけれど、あとで文字にするかも)

では気になった刀剣の感想を書いてゆきます。

一階入口正面の大太刀たち

内)14.大太刀 無銘 号祢々切丸 重要文化財
南北朝時代14世紀 

宝物館の扉を開けると真正面にあるのが祢々切丸。
刃長216.6cm、反り6.1cm、茎長107.5cm、総長324.1cm。でっか。
こちらはご存じ刀剣乱舞に登場している刀剣。
「初めて見るゲーム実装刀」は久しぶり。でも見たことある気がするのはなぜかしら。
大きくて太郎太刀みたいだから?でも太郎太刀とは似ていない。
拵えだ! 茶のしましまのやつ!
一気に目の前の刀がゲームで見ている刀だという実感が湧き上がってきました。涙ぼろぼろ。

「重量を軽減するためか棟肉を削いで鵜首造としている。」
「刀身と比較して茎が長く、実用として考えた場合薙刀同様なぎはらって使用したものであろう。」との解説でした。

全体的に肌立っていて板目肌がよく見えます。アクセントになり得るウネウネした板目。そういえば拵えの縞々の隙間も板目模様だ。おそろい!
上に書いた通り、尺が長いためか中心より茎側は目立った焼きがありません。しかし鋒側は互の目、小丁子、飛焼き。物打ちあたりは金筋砂流しがよく見えます。少し屈むと帽子の二重刃も見えます。
予想に反して華やかだと思いました。キラキラした華やかさではなく、実は潜んでいるおしゃれ。色使いは派手ではないのに模様が凝っているというかんじ。
今回は特別祢々切丸を目当て来たというつもりではなかったけれど、やはり実物を見られて良かったです。頭の中の刀剣男士像がより一層鮮明になるというか、肉を纏うような感覚を得ました。

内)15.大太刀 無銘 号柏太刀 重要文化財
南北朝時代 14世紀

刃長135.3cm、総長189.6cm。延びた大鋒がシャープ!火焔帽子がかっこいい!
左の祢々切丸、右の瀬昇太刀と比べると、もし柏太刀が刀剣男士になったら、古今ちゃんのような一見女性のような雰囲気かなーと思わせるきれいさがありました。
号の由来は5月の端午の節句に奉納されたからとのこと。刀装具の金具にも柏の意匠が見られます。
そういえば拵えのしましま模様(蛭巻太刀拵)の巻きの向きが、鐔を境にして逆なんですよ。太刀置きの状態で、柄から鐔までは左下に下がり、鐔から鞘尻は右下に下がります。巻きの向きは揃っているものでもないのかな?

内)13.大太刀 無銘 号瀬昇太刀 重要文化財
南北朝時代 14世紀 

刃長124.8cm、総長158.2cm。瀬昇(せのぼり)太刀を見るのは今回で二度目。初めては福岡市博物館での侍展。その時は「こんなに美しい大太刀があるの?!」と衝撃を受けたことをよく覚えています。
今回目を惹かれたのは帽子。砂流しや掃きかけの具合が華やかでした。それと鋒~物打ち付近と、剣巻竜の彫り物の付近にライトが当たっていて地斑がよく見えました。

初めて瀬昇太刀を見たときの記事↓

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侍展 看板

入口正面の大太刀たちは裏側からも見ることができます。どれも肌立っていて見比べるのがおもしろかったです。どの大太刀もそれぞれ異なる華やかさを秘めているように感じました。

あとノートに残っていた謎のメモ「刃文よりもぱっと見で気づきづらいけど、燃えている」
なにが燃えているんだ…?


一階の刀剣

内)29.太刀 無銘 号 抜丸 重要文化財
鎌倉時代 13世紀

遠目から わ!すっごい古そう!と思ったこちらの太刀。雉子股茎の頼りないと思えるほどの細さ!刃文は、見えるか見えないかの狭い細直刃が、鋒にゆくにつれてなんだか暗い。よく見えない。滲むようなモヤモヤ。これはもしかして久しぶりに見る「うるんだ」刃文?
その通りでした。「上半は総体にうるんでいて焼刃は見えない」とのこと。
茎は相応の古さを感じるのに対し、刀身に感じる力強さは何?!バーン!ってしてるんですよ。元気。すごいギャップ。
鎌倉時代中期(建治2年/1276)頃の作ですが、同時期に活躍した来国行や長船光忠よりも古様のようです。

外)11. 大太刀 銘 行次 栃木県文化財
鎌倉時代初期 12世紀末

チリチリ縮緬肌!これは一目で青江かな?と思えました。ナマズ肌は探してみたけれどなさそう?刃文は小乱、小丁子、葉足がしきりに入って華やかです。
総長103.2cm。祢々切丸・柏太刀・瀬昇太刀を見た後だと、こちらの大太刀は普通の太刀くらいの大きさに感じられました。

外)38.太刀 銘 重次 栃木県文化財
鎌倉時代後期 13後期

こちらも青江。角留めの樋が珍しい。3.1cmと反りの深い姿。6cmも磨り上げられているいるなんて、元の姿はどんなだったのでしょうか。

二階の刀剣

外)39.大薙刀 無銘 伝長船兼光・義光
鎌倉時代末期〜南北朝14世紀

互の目の刃文を持った作品では、この大薙刀一番目立ちました。鋒側は飛焼き交じり。
茎側に向かう途中で、フェードアウトしてゆくようにゆる〜くなる互の目がきれいでした。

外)10. 無銘 小太刀
平安時代 11世紀

焼き出しの刃文がねむい!
今回の感想久しぶりに「うるむ」とか「ねむい」を使っています。古いお刀って感じ。
刃文が全体的にふんわり、ゆら~っとしています。所々に砂流しが入ってきれい。美しい鋒。
抜丸と同じくこちらも短刀のような茎。そして元気!みなぎっているな!

「本作は安綱など在銘最初期の太刀(三条宗近・古備前正恒・友成等)と比較すると作り込みが古様」とのこと。だろうな〜と納得してしまうものがあります。

内)8.太刀 無銘 古太刀(カマス切先)
平安時代 11世紀

小太刀ではなく古太刀。抜丸や10の小太刀と同じくこちらも元気!な平安刀。茎が華奢!短刀の茎みたい。刃長は73cmありますが、細身なせいか小さいような印象を受けました。腰でしっかりと反りがつき、鋒側は反りがありません。「11世紀頃に完成した日本刀再初期の姿型が偲ばれる、現存稀有な太刀である」とのこと。うっすら細直刃が見えるかな〜?いや見えないな〜くらい見えなくて、埋焼という焼き方がされているそうです。
この太刀、直刀ではなくて鎬造りなんですよね……なぜかはわからないけれど、私の中では直刀が重なって見えました。カマス鋒だからかな?そして暗い鉄の色。冒頭で元気な平安刀と書きましたが、元気を通り越して圧。圧。圧。会場内で見た中で一番激しい何かを感じました。怖かった。泣いた

内)31.小太刀 銘 来国俊 国宝
鎌倉時代 14世紀

端正な見た目。無地かと思うほどの詰んだ肌。
国宝。日本で一番短い国宝。だけれど、この場で存在感を放っていたのは剣でした。


以下で紹介する剣は、山霊感應という大きな絵画の前に五振りすべて立てて並べてありました。
これがすごかった。

内)23.剣 三鈷柄剣 重要文化財
剣 平安時代 11~12世紀・三鈷柄 鎌倉時代 13世紀

沸のキラメキ!こんなにキラッキラな剣、しかも平安時代に作られた古いもので見たことあったかしら?多分ない。
総長85.6cmと長く迫力を感じます。でも茎は細い。今回見ている刀剣たちこういう子が多いですね。

内)22.剣 無銘
平安時代 11世紀

地沸が厚くついているのが一目でわかるキラキラ!この剣も古く割れなどが見えますが、それを凌ぐ沸の存在感。
5振りの中では最長で、刃長81.0cm、総長95.8cm。

内)25.剣 銘 一
鎌倉時代13世紀

これもピカピカ。5振りの中で一番小さく刃長31.3cm、総長42.7cm。

内)26.剣 銘 表 奉納男体権現御宝前 願主佐野市住小林康敏
裏 宮入法廣謹作 平成二十年仲秋吉祥日
平成20年(2008) 21世紀

今回の展覧会では現代刀匠である宮入法廣刀匠の作品が3振りありました。
22の剣から順に見ていくと唐突に現れる平成の刀剣。びっくり。平安剣たちが平成剣に負けない輝きなのか、それとも宮入刀匠の作品が古刀のような雰囲気があるのか。
改めて他の作品を見てきたところ、どうも後者のような気がしました。茎を隠したら古刀と見分けがつかないかも。

内)24.剣 無銘
平安時代 12世紀

金筋砂流しがよく見えたせいか龍が登っているように見えました。
沸々キラキラの中に隠れた板目がキレイ!

樋がそれぞれ違ったのでメモ
26 樋なし
22 鎬に棒樋を掻き流し、それを挟むように添樋も搔き流し
23・24・25 鎬に22よりも細い棒樋を掻き流し/25は丸留め


こういうことを書いたら気持ち悪いと思う人もいるのかもしれないですけど、書いちゃお。
作品を並べた方の演出力がすごいのか、作品そのもののパワーがすごいのか。両方ですかね。
この剣たちは剣の形をした何かだと感じました。絵画と剣5振り、手を合わせたくなる。あれはきっと畏怖。

宝物館に入ってから武者震いのような、どうしようという不安感のような妙な居心地。ざわざわ。刀剣を見に来れた喜びで浮き足立っているのか?と思ったけれどもそうでなくて。
祢々切丸ら大太刀を繰り返し見ながら、これらはただの刀剣ではなくて”御神刀”なのだと理解したのが答えかもしれません。抜丸や8の古太刀、10の小太刀を元気!と感じたのも、単に状態が良かっただけではないのだと思います。
まずとにかく、凄い刀剣たちでした。
御神宝展の刀剣たちをまるっと2023年ベスト刀剣オブザイヤー(個人開催)にノミネートです。

ちなみに過去受賞刀剣は
2015年 亀甲貞宗
2016年 童子切安綱
2017年 狐ヶ崎
2018年 八坂神社蔵の豊後国行平
2019年 毛利博物館の伝友成
2020・2021年 なし
2022年 亀甲貞宗

頭に引っ付いて離れない/かっこよすぎた/頭をガツンと殴られるような/時を止めた刀剣たちです。

二荒山神社中宮祠と祢々切丸の御朱印

観光はまた次回

今回の遠征は一泊二日。予定では一日目で刀剣鑑賞を終え二日目は周辺散策の予定だったけれど、ここでやはり電車遅延が響いてきますね。しかし遠征の目的は刀剣を見ることなので、次回です。次回ちゃんと見ます(涙目)。クルージング、イタリア大使館別荘記念公園、英国大使館別荘記念公園…行きたいところやってみたいこと色々!
事前にこういうサイトを見ていました。

みちくさガイド

日光駅から西へ、名所「いろは坂」をのぼった先に広がるのが、大自然の魅力あふれる奥日光エリアです。湖沼や大小の滝、川、湿原…

とはいえせっかく日光に来たのだから、あの有名な滝を見て帰ろうじゃないかということで華厳の滝に寄ってみました。
三連休初日だったせいか駐車場はどこも満車!でもここはラッキーガール刀剣訪問ブログちゃんなので大して待たずに車を停めることができました。

スマホで撮ったのをそのまま貼ったらすごくサイズが大きくなっちゃった(PC閲覧時)。
滝は無料で見ることができるのですが、せっかくなので有料エレベーターで50m下まで行ってみました。念の為に持ってきていた傘が大活躍。滝からガンガン飛沫が飛んできます。
グーグルマップの「EVはお金を払う価値アリ」というレビューはなるほどね。上から見るよりも迫力のある流れを見ることができました。私からもオススメ。

食べたもの・おいしかったもの

初日 昼 携帯食
   夜 食堂
二日目朝 前日にホテル付近のスーパーで買っておいた適当なパン
   昼 カフェ

本当は初日昼もどこかで食べようと思っていたのだけど、これも電車遅延の影響。現地到着が遅くなったのでやめちゃった。刀剣鑑賞時間重視。

ペンションフレンドリーさんでいただいた夜ご飯。牛ステーキ丼。湯葉がおいしかった。
おなじくペンションフレンドリーさんで購入した山椒の佃煮。これは買ってよかった!しょっぱさと山椒の爽やかさが不思議な風味。冷蔵庫に常備したい。

混雑具合をきいてみた

また訪れたいので日光駅の案内所や中禅寺湖の売店の方に、どんな時が混むのかを尋ねてみました。
まずは天気が良いこと。暑くなってから。
日光は東京から二時間くらいなので、朝天気を確認した都民が「今日天気いいね。じゃあ行こうか」という感覚で行くのだそうです。そして三連休は初日よりも中日が混む。初日は家でゆっくりお休みして、中日に行楽に行くという感じ。
私が訪れたのは金曜と土曜。つまり三連休前と連休初日。天気があまりよくなく、朝方は20℃を下回る。という条件が重なったせいか、混みすぎないところをゆっくり楽しめました。ヤッタネ

とはいえ宇都宮駅の日光線のホームは外国人だらけだったし、華厳の滝の駐車場ではお隣がインド系ファミリーだったし、インバウンド客が多い印象でした。さすが一等観光地。

おわりに

中禅寺湖と男体山は、まるで十和田湖と八甲田のような親しみのある景色でした。
車で移動していたこともより「いつも」感があって、とてもリラックスした遠征となりました。
心配だったいろは坂は上りも下りも景色を楽しめるくらい余裕で、時間に縛られずサクサク移動できてよかったです。次回もまた車で走りたいですね。

2023年になってから、徐々に遠征の習慣が戻りつつあるのを感じます。
明日もまた遠征。車で。
住むところが変われば遠征スタイルにも変化がありますね。
知らない刀剣、知らない施設、毎回勉強。楽しいです。 おわり

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