伏見貞宗を筆頭に短刀が素晴らしかった展示の話 「名刀礼賛 もののふ達の美学」

■日時  2017年6月3日・10日
■場所  泉屋博古館分館(東京)
■入館料 800円(2回目は半券提示で400円)
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この展示の告知を見た人はこう思ったかもしれません。
黒川古文化研究所?
泉屋博古館(せんおくはくこかん)

どっち?
双方の施設を軽く説明すると、
兵庫県にある黒川古文化研究所は東洋古文化の研究・展示機関。
泉屋博古館本館は住友家が蒐集した中国の青銅器や絵画等の美術品を保存・展示する美術館。
本館は京都、分館は東京の六本木にあります。
つまり別々の機関。
それぞれ得意な研究が異なるので、美術品を相互寄託されているそう。
そういう繋がりのある二館の今回の企画は
『泉屋博古館東京分館』にて
『黒川古文化研究所』の刀剣コレクションをメインに展示する
という内容になります。
さて黒川古文化研究所といえば!
伏見貞宗!!!わたしのお気に入り刀匠・貞宗の国宝作品!
去年兵庫で展示されていた際に行けなくて非常に悔しかったです…なのでこんなに早いタイミングで六本木で展示されたのは本当にラッキーでした。
というわけでさっそく行ってみましょう!
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泉屋博古館東京分館はとてもアクセスのよいところにありました。
六本木一丁目駅駅の中央改札を出たら左折。
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このポスターが貼ってある扉を出ます。
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エスカレーターでどんどん上へ。
たくさん広告が貼ってあるので、迷わず到着。
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刀剣だけで30振以上、さらにたくさんの刀装具…なんともりだくさん!
個人的には短刀に好みのものが多かったので、短刀メインで紹介していきますね。
(館内は写真撮影禁止です)
■短刀 銘来国俊
鎌倉時代13〜14世紀 国宝

良いですね!
右隣に優等生の粟田口吉光が並んでいます……が、吉光をおさえて軍配はこちらに上がるかな。
(飽くまでも私の好みですが)
地沸が細かく肌目が見えないほどに詰み、匂口も明るく冴えていて、
一言で表すとキラキラしているな、という印象でした。
■短刀 銘鎌倉住新藤五国光 法名光心 正和二二年□月十日
鎌倉時代・1315年

新藤五国光はどうしてこんなに良いのか……ジャスティス!
整った肌、刃と地の強めのコントラスト。繊細な彫りは大日如来の梵字と素剣。
ハバキから少し上のところに傷があったり、鉄がやや疲れているように見えるところがちょっと惜しいかな…それでもたまらん美しさ。そのままの君で。
新藤五の作品は姿にあまりブレがないように感じます。これもそう。直刃もビシッときまっていて、背筋が伸びるような作風ですね。
■短刀 無銘 伝貞宗 名物 伏見貞宗
鎌倉時代14世紀 国宝

展示室のいったいどこにあるのかと思いきや。
山城〜備前〜相州と進んで行くので最後から二番目に展示されていました。(ちょっと探したw)
まず注目すべきは肌でしょうか。
単眼鏡を使わずとも見える沸のつぶつぶ!
粒立った沸とややヌメッとしたツヤのある肌。
詰んだ肌だと肌目がよく見えないのが多いですが、これは刃に近いところに板目がよく見えます。
光を反射して見える肌のうねり。魚のよう。これがイイ!
そして姿も完璧。元幅の太さが絶妙。
刃文はのたれを基調に、だいたい等間隔でポコッと互の目が混じります。
彫物は上から不動明王の梵字、素剣、爪
裏は毘沙門天の梵字、腰樋。
この彫りも、シンプルながら丁寧さが見てとれてよいですね。
姿、肌、彫、どこもよかったです。さすが国宝指定付きは伊達じゃない。
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(画像転載不可)
会場で販売されている伏見貞宗の絵葉書。
ちなみに伏見貞宗に同じく、国宝の寺沢貞宗はこんなかんじ
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刃文の感じや彫物が似ています。
肌が精緻だったことは覚えているけど………う〜ん、もう一度見たいな(^o^)
よい短刀が多いので、もうひとつこれも書いておきたい。

吉光…サラァ
来国俊…キラッ
来国光…つやぁ
長船賀光…ザラァ
新藤五国光…ピシィッ
伏見貞宗…ギラつやピシピカァ

今回展示されていた短刀のを一言で表すとこんなかんじ。
私が刀を見始めた時は、短刀をどのように見たらよいのかイマイチわかりませんでした。
太刀や刀に比べて刃文が地味だし姿もたいして違わないし。(と、その時は思っていました。)
そのように感じている方はぜひこの展示で『肌』の違いを見比べてみてください。
単眼鏡が無料でレンタルできるので、肉眼で見てもわからないところまで見られます。
それと、吉光と国俊は同じくらいの長さで二振りとも護摩箸が彫られているデザインです。
ぱっと見似ているけれど違う二振り。
肌の質感や匂口(刃の縁)の違いが見てとれると思います。
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(画像転載不可)
国俊の絵葉書
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短刀でだいぶ文字数を割いたので、大きいのは一言感想。
■太刀 銘大和則長作
鎌倉時代13〜14世紀 重要文化財

直刃調に足、浅くのたれ、砂流し入る。
派手さはないけどなんかイイ。尻懸則長の作品にはいつもそんな感想を抱きます。
■太刀 銘国光
鎌倉時代13世紀 重要文化財

粟田口の国光。最高にクールな細直刃。小鋒。
短刀以外では一番姿が好き。
■太刀 銘国宗
鎌倉時代13世紀

こういうトロッとした丁子が好きです。
透明感のある肌の上に、刃文や匂口のモヤッとした白さが乗っかるようで
刀身全体に奥行き(深さ?)があるように見えます。
池に映る雲みたい。
■刀 無銘 伝長谷部国重
南北朝時代14世紀 重要文化財

長大ですね。
鋒の方から、体を左に動かして見てみてください。飛焼きイリュージョン。
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参考までに、今回レンタルできる単眼鏡はこれ。

Vixenマルチモノキュラーの4倍。
ピントが合わせやすく使いやすいです。
単眼鏡で刀を見てみたはいいけれど、いまいち良さ・すごさがわからなかったという人は
刀装具の方でもう一回トライしてみてね。
目貫(めぬき)や鍔の彫りは細かく、その上ガラスケースから距離があります。
それらを単眼鏡を使って見てみるとわぁすごい。
獅子のたてがみの一本一本や鯉の鱗までハッキリクッキリ!
展示No.80の能狂言図大小鍔もチェック。
刀を打っている場面が鍔に描かれています……小鍛冶?
着物の柄や注連縄(しめなわ)の細かさに驚きます。
初めて単眼鏡を使う人はどうしても目に力が入ってしまうので、ゆっくり休みながら使うとよいですよ。
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長くなってまいりましたが最後にもう一つ語らせて!
この企画のポスター、すごくかわいいですよね!黒×ピンク!
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鍔のデザインもよく見ると……
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SWORDになってます!
はじめてこのポスターを見た時に、他の展示のポスター・フォントを思い出しました。
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(こうやって並べてみてみるとあんまり似てはいないけれど。)
大名家秘蔵の名刀展に携わった澤田先生より伺った
『女性にもたくさん来場してほしいとの思いから、ポスターなどのデザインも女性感覚を採り入れようと若手女性デザイナーにお願いした』
という話が頭に残っていました。
もしかして名刀礼賛にもそういった意図があったのかしら…
いずれにしろカジュアル&かわいいくて好きです。300円でポスターが販売されていたので買っちゃった♡
まだまだ書き足りないところがいっぱいありますが、今回はこの辺で。
優品美品がたくさんのこの展示は8月4日まで。
期間中は泉屋博古館文館長のギャラリートークや、黒川古文化研究所の研究員さんのお話などイベントもあり。
HPをチェックしてぜひ行ってみてね!では。
名刀礼賛 もののふ達の美学
公式HP https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

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