■日時:2019年1月7日
■場所:佐野美術館(静岡)
■展覧会名:REBORN 蘇る名刀
■入館料:900円(当日割引券)
■交通費:4,540円(東京⇔三島)


看板






今回の展示も古備前正恒、友成、三条宗近、粟田口吉光、来国行、正宗、貞宗などの有名刀工の刀が並びます。見応え抜群の約五十振り。
しかしいつもの刀展と違うのは、焼身(やけみ)の刀がメインの展示だということ。
焼身というのは字のとおり、戦や天災などで焼けてしまった刀のことを指します。
銀色に光り輝く日本刀が焼けてしまうとどうなるのでしょう。
もう価値や魅力はなくなってしまうのでしょうか。
展覧会名のREBORNに込められた真意。
日本刀が存在し続けていることについて、考えさせられる展示でした。


なんて冒頭がちょっと重い書き方になってしまいましたが、シリアスに考えれば深いし、単純に焼身刀の見比べ楽しいーー!!という展示でもあるのでみんな見に来てね!とうらぶ実装刀剣も出るよ!!

IMG_3112
反射して写り込んでしまった

展覧会概要

まずは展覧会概要をおさらい。
REBORN ポスター
会場は静岡県三島市の佐野美術館。
会期は2019年1月7日(月)から2月24日(日)まで。
展示入れ替えはほぼないですが、刀剣乱舞に登場する刀たちは日程が異なるので要確認。
不動行光 :1月7日(月)〜2月24日(日) 通期
燭台切光忠:1月7日(月)~1月23日(水)
鯰尾藤四郎・骨喰藤四郎:1月7日(月)~1月30日(水)
宗三左文字:2月1日(金)~2月24日(日)

刀剣乱舞のパネルと描き下ろしイラスト以外は館内撮影不可、メモは鉛筆のみ使用可です。
パネル1
パネル2


刀剣乱舞-ONLINE-コラボレーション

コラボ男士は不動行光・骨喰藤四郎・宗三左文字の三振り。

伊豆箱根鉄道の記念乗車券の販売、オリジナルグッズの販売が企画されています。
そしてコラボの定番スタンプラリー。私はスケジュールの都合で参加することができませんでしたが、楽しく開催地の魅力を知ることができるので時間がある方は参加をおすすめします。
スタンプラリーについては#とうらぶ男子さんで記事があります。こちら

街をあげて歓迎するスタイル。コラボ公式HPが提供しているマップもとてもわかりやすいです。必携!




詳細は三島市×刀剣乱舞-ONLINE-コラボレーション企画のページ






ではいよいよ展覧会について。
今回の記事では展覧会のキーワードとなる用語を中心にお送りします。


焼身刀とその状態について

児手柏燭台切光忠
※撮影OKの展覧会にて撮影した写真です
焼身の刀といえば、過去に見たことのあるのは刀剣乱舞でもおなじみの燭台切光忠や骨喰藤四郎。
同じ焼身といえども燭台切は黒く焼けた刀身に溶けた金ハバキをまとう姿。
対して骨喰藤四郎は再刃(さいは)されており、当初の姿とは多少異なりますが、一見すると焼けたことがわからないようなピカピカの姿です。
今まではこの二種類の区分しか頭になかったのですが、この展覧会では更にいろいろな状態の焼身刀を目にすることになりました。主観でまとめてみるとこんなかんじ。

焼身レベル1 焼身の程度が軽かったので再刃せず研磨しただけのもの

普通の日本刀と変わらない見た目。研磨だけで済ませることもあるんですね!
展示品)11.太刀 銘国宗 金象嵌銘 奉納一剣于/東照宮聊謝我願満足/有馬氏中務小輔忠頼

焼身レベル2 再刃されたもの

こちらもぱっと見ただけでは普通の日本刀と変わらない見た目。きれい。
展示品)骨喰藤四郎、不動行光、獅子貞宗、大坂長銘正宗など

焼身レベル3 日本刀の形をした炭のようなもの

焼けて刀身は黒く変化してしまっているが、銘や彫り物が残っており姿もきれいなもの。
黒い見た目ではありますが、日本刀だと判別できそうです。
展示品)燭台切光忠、上下龍正宗など

焼身レベル4 鉄の棒?

焼けて黒いのはもちろん、反りが戻ったという程度ではなく姿がぐにゃりと変形しているもの。日本刀だとわからないかもしれません。
展示品)35.太刀 銘助平、37.太刀 銘備前国新田庄住親依造


再刃(さいは)について

再刃、別名焼き直し。
火災などで高温にさらされたり、また研ぎなどで刀身がすり減ると刃(そして刃文も)が失われます。それに再び焼入れを施すことを再刃と呼びます。ここでは"さいは"とルビをふっていますが、”さいば”や”さいじん”と呼ばれることもあります。

刃文は押形や刀絵図が残っている場合はそれに近づけるように作り、もしそれらの資料が無い場合は、元の刀工の作風や特徴を表現するように再刃します。
しかし焼け具合によっては再刃に耐えられない刀もあります。
それらの状態を見極め、元の状態に近く再現できる技量があるのが再刃をする刀工ということなのです。

この展示では徳川家康のお抱え刀工・越前康継や隅谷正峯刀匠、大隅俊平刀匠ら人間国宝によって再刃された刀が多く展示されていました。


再刃された刀の特徴

一度焼けてしまった刀は鉄の性質が変化し、たとえ再刃によって見た目がきれいになったとしても元と同じ状態には戻りません。
・肉が痩せる
・水影ができる
・潤いがなくなる
・刃切れがある(刃から刃境に向かって垂直に入る傷)
などなど、このような特徴があらわれます。

水影。
刃区(はまち)あたりにできる斜めの影のような部分のことです。
水影用
この短刀には水影はないけれど、だいたいこのあたりということで。

鯰尾藤四郎は水影がよく見えます。
上の写真とだいたい同じ位置にボヤーっと黒く、光と角度によっては白っぽく見えるところが水影です。
また、通常の日本刀が刀身内部から光を発して見えるとしたら、再刃された刀はその輝きがどこかぼんやり、曇って見えます。

水影や輝きがよくわからないという方も、刀身にある亀裂(割れ)は見つけやすいかと思います。これを有する刀剣が他の展覧会に比べて多いように感じました。

鑑賞ではわからないことですが、鉄の性質が変化しねばりがなくなるので折れやすくそうです。
それはすなわち武器として使えなくなる、もしくは使うのをためらわれるような状態になるということ。見た目だけでなく、道具としての性質もそこなってしまう。これも焼身刀が負う「傷」の一つなのです。


気になった刀ピックアップ

大坂城落城で焼けた刀

4.短刀 銘相州住正宗/嘉暦三年八月日 大坂長銘正宗

越前康継による再刃。
おおさかちょうめいまさむね。正宗にしては珍しく銘のある刀です。
雲のような皆焼風の刃文が目立ちとても美しいです。元はのたれに具の目まじりの刃文とのこと。
こちらは徳川美術館(愛知)さん所蔵でたびたび展示されますが、今まで見た中で一番よく刃文が見えました。過去に見たことがある人はぜひ見比べて見てください。

5.短刀 銘正宗 上下龍正宗

越前康継による再刃。
のぼりくだりりゅうまさむね。刀身の表の龍は頭が鋒側、裏側の龍は茎側にあります。
こちらは大坂城落城時に焼身→再刃→関東大震災にて再び焼身になった刀です。
さすがにくたびれて見えますが、二度焼けているにもかかわらず龍の彫りが表裏しっかり残っています。強い!

6.脇差 無名貞宗 獅子貞宗

越前康継による再刃。
この展示の最本命。貞宗が好きになったときから展示されるのを今か今かと心待ちにしていた刀です。
水影、割れ、刃切れ、曇った輝き。いつも見る貞宗と比べて鮮度が落ちた感がありますが、帽子の形やその付近の板目肌、湯走りや砂流しなど見どころが多く貞宗だとわかる雰囲気でした。
好きな刀工の刀をこれだけきれいに再刃してくれるなんて、越前康継さまさまです。ナンマンダブ。
獅子貞宗メモ

日光東照宮の火災で焼けた刀

12.太刀 銘一

刀身の上下は黒いままで、真ん中だけを研磨された状態の太刀。部分的に研磨することを「窓開け」と呼びます。焼けた肌に丁子の刃文が透けて見えたため、この展示のために日光東照宮にお願いして研磨させてもらったそうです。
※イメージ図
窓開け

関東大震災で焼けた刀

35.太刀 銘助平、37.太刀 銘備前国新田庄住親依造

焼けて黒くなった刀=燭台切光忠のような見た目、と思っていたのでこれらには驚きました。あぁ!と声が漏れてしまうような変形した姿です。燭台切がたまたまきれいだったんですね。
こんな姿になっても尚貴重であることの理由に銘の残存があげられます。
備前助平の作は現存品がほとんんどありません。ゆえに焼身でも残っていることが大切なのです。

焼けた時期が不明の刀

44.短刀 銘行光 不動行光

再刃時期不明。
昨年1月に約50年ぶりに展示されたという不動行光。今回やっと見ることができました。
まず驚いたのは刃の明るさ。不動は展示室の奥の方にあったのですが、それまで見てきた再刃刀よりも輝きが大きかったように見えました。焼身でこれならば、本来の姿はどんなに輝いていたのだろうと想像せずにはいられません!


↑このツイートの1枚目の写真が不動行光です。



照明とキャプションについて

照明が良いでお馴染みの佐野美術館。今回も照明・展示の高さともに見やすいものでした。
キャプションはこんなかんじ
キャプション
いろいろな展示のキャプションを見ていると、各展覧会それぞれに向いたキャプションがあると感じました。例えば京のかたな展なんかは京都、そして山城伝とどうかかわるかを文字数多めでしっかり説明がされていましたね。
こちらの展示ではいつ焼けたか、誰に再刃されたかがまず頭に書かれ、来歴、刀工のこと、刀そのものについての解説がシンプルに要点をおさえて書かれています。文字が大きめなのもうれしいところ。


あと24.短刀 銘則重と30.短刀 銘左が上下並べて展示してありました。
一見どっちがどっちかわからないように見えますが、武庫刀纂(※)の該当ページが添えてあるので、それを見ながら目釘孔の数などで判断することができるのもおもしろいと思いました。
※武庫刀纂とは…ぶことうさんと読みます。水戸徳川家に伝わる刀剣を産地・刀工ごとに編纂した書物。寸法や押形も添えられているので、焼けてしまった刀でもこれを見ることによって元がどんな姿だったのかがわかります。例)燭台切光忠 徳川ミュージアム蔵(茨城県水戸市)


焼身刀の価値について

この展示を見るまで知らなかったことがあります。
それは「一度焼身になってしまった刀にはもう価値がない」「焼身は恥ずかしい」「再刃なんてタブー」という見方があるということです。

失くなったと思われていた燭台切光忠が発見され、その姿を見たときには、日本刀本来の美しさは失ってしまったけれども黒い刀身が美しい。そして焼けてもなお大切に残されてきたこと、受け継いできた人たちの想いに大変感動を覚えました。骨喰も、鯰尾も、不動も、宗左もそしてこの会場にある再刃された刀たちはどれも美しかったです。それなのに、なぜ?

おそらく私達若い世代、最近日本刀鑑賞の世界に足を踏み入れた者たちは知らない価値観なんでしょう。

「欠点のない古刀こそが名刀!」
欠点とは傷や割れのことも言います。焼身ならなおさら欠点。
貴重な銘が残っていても、来歴など、歴史的な価値があったとしてもダメなものはダメなんだそうです。

焼身ははずかしい。
そんな見方が過去、そして現在もあるので、焼身刀の持ち主は所持していることを黙っている。
展示されていた焼身刀はほんのごく一部。
数は言えないけれどまだまだたくさん存在しているようです。


でもちょっとまって。
この会場には越前康継に再刃された刀がたくさんあったよね!?
越前康継は徳川家康のお抱え刀工。そして今回出陳されていた焼身刀の所蔵元を見てみると、
徳川美術館・徳川ミュージアム・日光東照宮宝物館と徳川家に関係する施設で半数を占めています。
つまり家康が焼身刀や再刃の価値を認めていたということでは?

もしも家康が焼身刀を無価値としてすべてポイしていたのならば、この会場にある刀たちの美しさを知る日は、永遠になかったのかもしれません。
でも現実はそうならなかった。
なぜ焼けた刀を大切に保管していたのか。
なぜ武器としてはもう使えないかもしれない刀をいくつも再刃したのか。


徳川家康という前例。そして新しい世代の価値観。
REBORNの意味は二つ。
一つ目は再刃して姿を取り戻すということ、
二つ目は焼身や再刃された刀の価値を見直し再発見するということ。


その姿を堂々とさらすことができる時代に向けて
今までの刀剣界の常識に一石を投じる、挑戦的で情熱溢れる展示です。
あたな自身の目で見て感じてきてください。 おわり





サイン
お礼
今回の記事は会場の案内係・佐藤友彰さんと渡邉妙子館長のお話を交えて書きました。
私一人で見ていたらばREBORNの二つ目の意味に気づくことはできなかったと思います。
渡邉館長にはたまたま偶然お会いして、図録にサインを頂いた上にたくさんお話まで聞かせていただきました。日本刀に対する情熱がものすごかったです。至福の時間でした。
お二人ともお時間いただき本当にありがとうございました。





REBORN 蘇る名刀
場所:佐野美術館(静岡)
会期:2019年1月7日(月)〜2月24日(日)
公式ホームページ:http://www.sanobi.or.jp/exhibition/reborn_sword_2018/
出品目録:http://sanobi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/01/shuppinmokuroku_reborn.pdf


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