鹽竈神社にて国包展をみに行った話

■日時 2020年1月14日
■場所 鹽竈神社博物館(宮城)
■入館料 500円

刀剣を常設展示していると聞いていた宮城県の鹽竈神社(しおがまじんじゃ)。なかなか行く機会に巡り会えなかったのですが、初詣をかねてようやく行ってみることができました。
鹽竈神社では毎年お正月に刀剣展が開催されおり、今回は国包(くにかね)の特集展示です。

展覧会概要

国包展の展覧会チラシ

展覧会名:令和2年庚子歳 新春特別展「仙台藩の名工 国包(くにかね)」
会場:鹽竈神社博物館
会期:2020年1月1日〜1月26日
公式ページ
展示本数はリストがない&数え忘れましたがおそらく40〜50振り。写真撮影NG、展覧会図録あり。

刀工・国包(くにかね)とは

十三代(十四代とも)まで続く仙台刀工の国包。伊達藩に召し抱えられ、数いた藩工のなかでも代表的な存在です。特に有名なのが初代国包で、用恵国包(ようけいくにかね)の銘も知られています。
大和保昌風の作風で、柾目に直刃というのがおおまかな特徴です。

数は少ないですが、今までに国包(用恵国包)を見て、そして触ったことがありました。しかし特に何も目に入ってこないというか、良いところがわからないというか。自分の中で輪郭を掴めていなかったんですよね。
なのでまずは細かい部分は見ずに展示品全体をざっくりと見て回りました。

意外と端正な姿に驚く

初代国包の姿が美しい。なんと表現すれば良いのか。優美という言葉ではないんですよね。整っている。端正。それでいて力強さがあります。脇指であれば南北朝〜室町あたりの大きい短刀の良作のようなバランスの良さを感じ、太刀であればやや踏ん張りがつき、わずかに鋒が延びています。仙台藩のお抱え刀工になったというのも納得と思えるような品の良さを感じました。
二代国包になると初代よりもやや身幅が増し、フクラついて、豪壮とまではいかないけれど肉厚感があり体格の良さを感じる姿になります。

柾目、どこまでも柾目

国包の代表的な特徴とも言える柾目(まさめ)。地鉄の肌模様がまっすぐになっているものを柾目と呼びます。柾目を有するのは一部の刀派・刀工のみで、大体の日本刀は板目(いため)基調、そこに木の年輪のような杢目(もくめ)模様が混じる肌をしているとイメージしています。
展示されていた初代国包から十四代まで、そのほとんどが柾目でした。
中には肌が詰んで柾目が見えなくなっているような作(初代)や、津軽塗りのようにも見える細かな杢目がたくさんある作(十一代)もありましたが、9割がきれいな柾目です。ややのたれた直刃、その刃文と柾目の境がよくわからなくなるような作品もありました。
こんなに柾目を有する刀を一度に見る機会がなかったのでちょっと新鮮な気分です。

水影と水影映り

国包には、主に再刃された(焼き直された)刀や古刀、堀川国広など一部の刀に表れる「水影(みずかげ)」という特徴が見られます。
水影は図上のように刃区(はまち)から斜めに入る影のような線で、光によって黒っぽかったり白っぽく見えたります。国包の水影は特に長く、まるで映りのように見えるため「水影映り」と呼ばれています。
キャプションの水影映りの説明を読んでも、実際に刀剣を見ると水影の淡さや照明の加減でやや見つけづらいものもありました。しかし水影映りを強調した写真付きの解説があったり、すべての刀剣に押形が添えられていたため、それを手がかりに探し出すことができました。こういうの嬉しいですよね!

これでもかと見える二重刃と喰違刃

二重刃と喰違刃

古刀の大和物などに表れるのが二重刃(にじゅうば)や喰違刃(くいちがいば)という特徴です。
刃中の働きに分類されるのかな?私もまだしっかりとは理解していない特徴なので説明が間違っているかもしれませんが、この二つは刃文ではなくて湯走りの一種…だと思います。沸筋の集まりによって、刃文の線(刃境)が二重に見えたり喰い違って見えるものです。読んで字のごとくですね。
私にはまだこれらを見つけることが難しく、あったとしてもとても小さくて気づかなかったり普通の湯走りと区別がつかないことが多いです。
国包の二重刃・喰違刃は大きく、明らかにそれとわかるような表れ方をしていました。そして数も多い。こんなにわかりやすい二重刃・喰違刃を見るのは初めてです。

二重刃・喰違刃を作る過程で生じたのか、金筋や砂流しも交じっています。また粗沸がアクセント的に見える作品もありました。沸を使った技が得意なんですね。

さりげない、飾らない、気取らない

姿の端正さ、柾目、二重刃と喰違刃。そして沸の心。
これらの要素が絡み合って独自の個性を感じます。人間のファッションでいうと、ちゃんと体型に似合ったスーツで、それでネクタイピンのセンスが良かったり、靴がかっこよかったり…みたいなかんじ?キメキメで飾り立てた感じはまったくしないのに、ちょっとしたところにおしゃれさが見えます。

その他に感じたこと、知ったことを箇条書きで。

  • 直刃というには乱れていて湾れ刃のように感じた。でも国包は直刃、直刃基調というようだ。
  • 帽子は焼きづめだったり掃いていたり
  • キャプションを読まずに展示品を見進めていると、あるところから作風の違を感じる。そこで代が変わっている。
  • 肌が詰んでいて明るい
  • 初代国包は隠居後に用恵の銘を切る。本来の読みは「ようえ」
  • 十代と十二代は水心子の弟子だった

展示室とキャプションと図録

展示ケースと照明は場所によって差があると感じました。
照明の当たりがよくて展示ケースとの距離も近い場所もあれば、ちょっと暗めだったり遠かったりする場所も。ただ展示ケースに近いものは本当に近くて、試しに4倍の単眼鏡を使ってみるとピント調整が難しいくらい近かったです。見やすかった!

キャプションでは、刀工の経歴・作品の特徴が丁寧に説明されていました。用語は多めだけれど難しい文章ではなかったので、刀剣の勉強をしている人、好きな人には充実した内容に感じると思います。こうではないか?という研究中の説についても、ポジティブ・ネガティブ双方の意見をまとめていて興味深く読めました。彦根城の虎徹展を思い出すくらい銘字の解説も詳しかったです。
さすがご当地刀工、国包に対する熱心な気持ちを感じました。

日本刀の見方説明のパネル1
日本刀の見方説明のパネル2

これはいただいたチラシのものになりますが、これと同じようなパネルが設置してあり、日本刀のことがわからない人でも「へ〜〜!」と思える何かしらを得られることと思います。

個人的にとてもニッコリできたのが、パネルに記載されていた「分からないことがあれば気軽にお声がけください」の一言ですね!この一言の有無で質問のしやすさが段違いに変わります。

鹽竈神社の刀剣図録

今回購入した図録は三冊。一番右の図録が国包展にて新たに発行された図録です。
国包展の図録を見ていて気が付いたのですが、ものすごく個人蔵の刀が多いですね…!展示品の7割以上でしょうか。なんて貴重!
図録の通販もしていなくもないとのことだったので、気になる方は直接問い合わせてみるとよいと思います。(おそらく現金書留で対応かと

以上、国包展のレポートでした!

アクセスと神社について

鹽竈神社周辺マップ
JR東北本線・塩釜駅改札内にある周辺マップ

二つのルートがあります。どちらも仙台駅スタートで、JR東北本線 塩釜駅から表参道まで徒歩20分程度のルート。もう一つはJR仙石線 本塩釜駅から裏参道まで徒歩10分のルートです。階段がきついのが表参道で、ゆるやかな方が裏参道。博物館は裏参道寄りに位置します
先ほどから「鹽竈神社」とだけ書いていますが、「志波彦神社 鹽竈神社」が正式な名称で、広い境内に志波彦神社(しわひこじんじゃ)と鹽竈神社のふたつの独立したお社があります。
塩釜駅から行くと表参道→鹽竈神社→志波彦神社→博物館、
本塩釜駅からだと裏参道→博物館→志波彦神社→鹽竈神社の順に回る
かんじですね。
もしも博物館に行くことを優先したいのならば本塩釜駅→裏参道ルートで行くのが一番近いです。今回私は特に急いでもいなかったので、塩釜駅スタートで表参道から行ってみました。

鹽竈神社表参道

これが噂の階段ですね。結構きついとは聞いていましたが、下から見上げるとなかなかです。202段。
しかしここは審神者力。栃木の織姫神社、京都の建勲神社など刀剣展示でめぐった各地の神社の階段も乗り越えてきた!気合いだ気合い!

石段にはひとつひとつの石に格子状の彫りが入っています
志波彦神社・鹽竈神社の御朱印
二社合わせての御朱印で500円でした

表参道の石段を登り切ると鹽竈神社です。
鹽竈神社を参拝してたら志波彦神社へ。

志波彦神社、社務所周辺回から見えるお庭。写真奥に塩釜湾が見えます。良い眺め。

日本刀も常設で7〜8振り展示しているそうです。
刀剣のほか、巨大なオサガメやオヒョウの剥製、クジラの骨格標本なども展示されていておもしろかったです。

鹽竈神社 裏参道
裏参道。表参道と比べたらかなりゆるやか。

おまけ 刀剣男士と瑞鳳殿に行ってきた

刀剣乱舞のアップデートにより、いつでも刀剣男士と写真がとれるようになりましたね!ちょうど仙台に来ていたタイミングでそれが実装されたので、まだ行ったことのなかった瑞鳳殿へ行ってみました。

いやはや、刀剣遠征であちこちに行く審神者とは相性バツグンですね。たしか2016年あたりにもこのような写真を撮れるキャンペーンがありましたが、期間限定だったんですよ。これからは遠征のたびにこのような写真が撮れるのかと思うと楽しみが増します!

瑞鳳殿、行く前はどこかのお寺にあるのかと思っていました。山ですね。前日の鹽竈神社に続きここでも階段がたくさん!

途中に返金式のコインロッカーがあります。荷物がある人は預けてから行くと身軽です。

敷地内にはこのようなトレッキングコースもあるので、晴れている日はお散歩にちょうど良さそうでした。

おわりに

自分のなかで「よくわからない刀剣」というのが今までもたくさんありました。
刀剣鑑賞のきっかけになった亀甲貞宗、短刀全般、なぜか好きになれない古備前友成…それらを少しずつなぞり、自分の中である程度こういうものだと捉えられるようになるのが楽しいです。今回の遠征では国包の輪郭を捉えることができました。以前と比べると遠征ペースはのんびりですが、2020年もいろいろな刀を見て、それぞれの刀剣の良さがわかるようになっていきたいと思います。 おわり

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