2024年の年末、Xにて以下のような投稿をしました。
2015年の刀剣乱舞がリリースされて以降、日本刀を取り巻く環境では様々な変化がありました。
その中でも、個人的に好きでずっと追いかけてきた展覧会について。皆さんは(この10年で)どんな展覧会が印象に残っているのかとても興味があったので意見を募ってみたところ、展覧会ベースで約225件の回答をいただきました。ありがとうございます!
自分の行ったことのある展示を振り返って頷いたり、誰かの温かい思い出に触れさせてもらったり、こんな時世だったなと懐かしく感じたり…大変エモかったです。読んでいて、涙が止まりませんでした。
Xからも閲覧可能ですが、あまりにも内容に心を打たれ、保存しておきたくてグーグルスプレッドシートにまとめてみました。
(スマホでの閲覧はデバイスによっては難があるかもです><)
- Xの投稿を可能な限りコピーしました
- 「個人の感想」を一番重視しているのでXユーザー名(非表示)でソートしてあります
- 展覧会名、開催年、公式HPは、わかる限り記載しました。間違っていたらご容赦ください
- 展覧会名ごとに並び替えたい方…C列にカーソルを合わせ、現れた右端の▼をクリックしてソートしてください
- 頂いた回答内容は編集しておりませんが、一つのポストで複数の展覧会について述べられているものは、展覧会ごとに分割したり、灰色の文字でマスキングしたりしています
- 個人的にイイネと思った箇所を赤文字にしています
ざっと分析
皆さんの感想を見てみたところ、大体以下のような点にお気に入りポイントがありそうでした。
- 大規模展示
- 展示方法の工夫…点字シール、押形併設、高さ
- 一番最初に行った刀剣展、原点となった刀剣展
- 推しの刀、推しのキャラクターの元になった刀が展示されていた
- 失われた刀剣の再現、失われたと思われていたものが現存していた
- 人生のつらい時に救われた
特に支持が多かった展覧会
- 京のかたな展 …45件
- 侍 ~もののふの美の系譜~ The Exhibition of SAMURAI …11件
- 国宝 東京国立博物館のすべて …9件
- 埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣界の雄 …8件(東京会場1件、大阪会場7件)
- REBORN 蘇る名刀 …8件
展覧会単位ではバラけたけれど愛知県の徳川美術館さん、広島県のふくやま美術館さん、東京都の刀剣博物館さん、岡山の備前長船刀剣博物館さんなどお馴染みの施設の名前が上がりました。
圧巻のスケール! 京のかたな展 京都国立博物館 2018年
質・量ともに素晴らしく、動員記録の点でも他の追随を許さないという理由で、最も支持を集めました。まさしくレジェンド。これがきっかけで刀剣遠征をするようになった、初めての一人旅行だったという回答もありました。
京都国立博物館は他にも2015〜2016年開催の特集陳列「刀剣を楽しむ─名物刀を中心に─」や2016年開催の特別展覧会「没後150年 坂本龍馬」(京都会場)で名前が上がっています。さすがの国立博物館。関西の刀剣展示施設の要ですね。
ヒトコト
京のかたな展及び埋忠展のような大規模展示は、あまり頻繁に刀剣遠征をしない関西圏の方に対する”機会”であったのかもしれません。よその地域で見る機会が多くある刀剣についても「やっと見ることができた」というコメントがいくつかあったため、そう感じました。地元で見ることができたという印象は大きいのかもね。元々日本国の文化面に強い地域。待っていればこれからもラクにお目当ての刀剣が観れるのでは?!
武将由来の名品揃い! 侍 ~もののふの美の系譜~ The Exhibition of SAMURAI 福岡市博物館 2019年
こちらも大規模展示でも票が入っていましたが、ほかには滅多に展示されることのない大典太の希少な展示機会(しかも地元九州!)、キャプションの良さや参加型企画「私のイチオシ」についての支持がありました。来館者も展覧会作りに参加し盛り上げることのできる画期的な企画でしたね。刀剣のほかにも甲冑や馬具、そして変わった形の兜などが一同に揃い、なんとも見ごたえのある展示でした。
しかしあのラインナップに物量…本当に市立博物館?県立じゃなくて? 福岡市すごい…おそるべし。
ヒトコト
京のかたな展と侍展。それぞれの展覧会期間中、私はその地域に1〜2ヶ月ほど滞在し、複数回観覧しました。展示物は双方すごいのに、どうして京のかたな展は信じられないくらい混んでいて、侍展は比較して過ごしやすいだろう。どうしてもっともっと盛り上がらないのだろう?とSNSを見ながら不思議に思っていました。「地の利」「周辺地域の人口差」「刀剣乱舞に登場する刀か否か」はどれほど関係があったのかが気になります。あの晴れやかな展覧会、最高でした。
わかりやすさが印象に残った展覧会
一口に日本刀とはいえ様々なテーマや見せ方があります。焼身刀に注目した異色のREBORN展、正宗と正宗に影響を受けた刀工たちを特集した正宗十哲展、ギネス記録に挑んだ展覧会…
中でも「わかりやすさ」に支持があった展覧会がいくつかありました。初心者フレンドリーな見せ方、ありがたいですよね。
- 偽物と比較する展示
- 乱藤四郎と偽乱藤四郎の比較 …見どころ学べる!目で観る刀の教科書展
- 「名刀と迷刀」 …佐野美術館
- 押形や目線シールを添えての展示
- 企画展「たゆたう刃文 きらめく沸」 島田市博物館 2023年
- 日本刀の華 -備前刀- 静嘉堂文庫美術館 2019年
- 名刀は語る 美しき鑑賞の歴史 岡崎市美術博物館 2018年
ちょっと番外編 アートな刀剣展
ねえ、この動画見て
企画展「日本の心象 刀剣、風韻、そして海景」 姫路市立美術館 2021年
コメントより抜粋:「キャプションには刀の来歴や特徴などの説明がゼロ」「風景写真やインスタレーションとともに展開された展示」
こちらの展覧会、第一章では明石国行含む50振が展示されていて(これも量が多い)、第二章にて動画の風景の展示があるようです。
別の展覧会で、メインの絵画展示の中に刀剣が三振り並んでいるとか、お面と一緒に展示されているといったのは見たことがあるけれど、来歴も見所も説明がないというのは聞いたことがないかも。この展覧会を見にいかなかったのでとても気になります。
失われたかもしれないものの再現
「実は現存した」「失われてしまったものを再現してみた」のようなミラクルが起こった10年でもありました。それに関する展覧会やイベントに、その刀を特に推している方たちから支持がありました。
陸奥守吉行
- 特集陳列「刀剣を楽しむ─名物刀を中心に─」 京都国立博物館 2015〜2016年
- コメント「陸奥守吉行の拳型丁子が浮き出はじめているのが初めて展示された」
- 特別展覧会「没後150年 坂本龍馬」 2016〜2017年 東京(江戸東京博物館)・静岡(静岡市美術館)・京都(京博)・長崎(長崎歴史文化博物館)での巡回展示
- コメント「長年の疑惑を退けて「坂本龍馬佩用」と認められて以降初めての展覧会」
蛍丸
クラウドファンディングに審神者として関わることができた
薬研藤四郎
- 再現刀奉納展示 建勲神社 2018年
- コメント「現代では目にすることはないと思っていた」
燭台切光忠
- 水戸徳川ミュージアムでの公開、再現作プロジェクト
- 第19回企画展「徳川ミュージアム所蔵品精選 TOKUGAWAIEYASU 天下泰平の軌跡」 羽田空港美術館ディスカバリーミュージアム 2015年
10年前に開催されたにもかかわらず5件も支持がありました。空港で見られたのが斬新、面白いというコメントも。当時は刀剣として登録されていなかった為叶った展示なのでしょうね。燭台切光忠は2019年に刀剣登録証が発行されました。
地域おこしにも拡大 刀剣乱舞コラボレーションのある刀剣展覧会
刀剣だけだとちょっと難しいけれど、刀剣乱舞とのコラボなら刀剣鑑賞のハードルが下がるかも?
各地の展覧会でコラボ展示が開催されましたが、意外と実現が遅かったのが刀剣乱舞実装刀剣を多数抱えている施設。待ち遠しかったですね。
そして「集合体」の元になっている刀剣たちのコラボ実現も。特定の施設でだけはなく、刀工の地元やゆかりの地域でもコラボを開催できる新たな可能性が見えてきました。
- 徳川美術館との初めての正式コラボ…名刀紀行―京・大和と九州― 2021年
- 徳川美術館さんは独自にいろいろやっていたけれど正式なコラボはこれが初
- 東京国立博物館との初コラボ…沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」(東京会場) 2022年5月
- トーハク組とのコラボではなく琉球展でのコラボ。同年10月に国宝展を開催し、こちらでは念願のトーハク組コラボを実現
- 大加州刀展 石川県立歴史博物館 2021年・2022年
- コメント「加州清光で他の刀剣のようにコラボはできないと思っていたのを石川県立歴史博物館さんが叶えてくれた」
- コロナで一度目の開催は中止になるも翌年に再度開催!ありがとう!
- 忠吉から忠広へー集結!初代忠吉ー 佐賀県立博物館 2022年
- よみがえる同田貫-豪刀の誕生とその再興- 玉名市立歴史博物館こころピア 2024年
ヒトコト
熊本県玉名市での同田貫展示。2015年は一振り程度と少なかったのに、2017年の同田貫Vにて菊池や延寿の刀工を含めた特集展示が組まれ、そして2024年にようやくコラボ実現&四館連携事業!
地元民でも関係者でもないのですが、この足跡は感慨深いです。2024年のコラボを喜んでいる同田貫推し審神者たちのSNSでの様子が私も嬉しかったです。
刀剣界全体に及ぶ変化
「女性が刀を見ていても浮かなくなった」「女性や子供でも見やすい展示の高さになった」
というコメントがありました。
女性であることで刀剣界でどんな経験をしたのか。故・渡邉妙子先生の時代、そして刀剣乱舞初期世代。異物を受け入れること、変わってゆくことの居心地の悪さ、戸惑い。
次の世代に良いバトンを渡していきたいですね。
あなたも参加している日本刀の歴史
皆さんのコメント=日本刀が愛された歴史だと感じました。
それぞれの刀にオーナーがいて武器として使われていた時代と、博物館や美術館で公共の美術品として扱われている現代。カタチは違えど、どちらも刀剣自身の人間に愛された記憶だと思います。
その長い歴史の中で、平成末期〜令和のキーになるのは間違いなく刀剣乱舞。
この記事では、私が追いかけてきた「展覧会」という視点からこの10年を振り返ってみましたが、これだけでもすでに熱い。ここまで火を絶やさなかった方々がいて、刀剣乱舞がきっかけで刀剣に興味を持つ層が生まれて、それに応えた趣向を凝らした展覧会が多数開催され…本当に多くの人の想いが熱く燃えて歴史を紡いでいる。
ブログを始めた時からこの景色を予感していて、積極的に関わって側で見ていたかった。
今後の10年、新たな景色はまだ予想できません。可能な限り、歴史の当事者でいたい気持ちを抱きながら、「日本刀が愛された歴史のいちページ 刀剣乱舞10周年に寄せて」をおわります。