最近は春恒例となってきたJRの「きゅんパス」。それに合わせてまとめていくつかの展覧会を訪れました。
しっかり鑑賞した展示もあれば、軽く立ち寄っただけの場所もあります。
この記事では、根津美術館と明治神宮ミュージアムについて、印象に残った刀剣や刀装具を中心に簡単に記録しておきます。

展覧会概要
展覧会名:企画展「英姿颯爽 根津美術館の武器・武具」
会期:2026年2月14日~3月29日
会場:根津美術館(東京)
展覧会案内ページ:https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html 展示品リスト
入館料:1,300円
備考:写真撮影不可
訪問日:2026年3月3日
根津美術館は数年に一度くらいのペースで刀剣関連の展覧会を開催しています。
今回は「光村コレクション」*から選りすぐりの92点の武器・武具が展示されました。
明治の実業家 光村利藻(みつむら としも) が蒐集した武器・武具のコレクション。
刀剣、刀装具、甲冑などを中心に、体系的に集められたコレクションとして知られています。
1909年(明治42年)、このコレクションのうち 約3,000点 が初代 根津嘉一郎 によって一括購入されました。
まとまった形で保存されたことで海外流出を免れ、現在は 約1,200点 が 根津美術館の所蔵品として伝えられています。
黒色と金色と立体感 装剣金工の世界
展示物には鐔や小柄、笄などの刀装具が多くありました。黒色がベースになっており、そこに金色の装飾が施されているものが多かったです。
どんな割合で金を入れるのか──波飛沫の一点?花弁や葉のうちの一枚?それとも全体的に?
そこに作家それぞれのセンスが表れていて、個人的に好きなポイントです。
また黒一色かと思えば全体に魚子(ななこ)が施されていたり、細かな彫りにより立体的に表現されているパーツが多数あるのもシンプルなのに目を惹く点であると感じます。
気になった作品メモ
- 1. 太刀 銘長光と2. 桜紅葉蒔絵太刀拵
身幅があって堂々としたいでだち。鋒側は丁子で茎側は互の目の刃文。絢爛豪華な太刀拵 - 4. 太刀 銘来国俊
やっぱり国俊いいな 他がそうではない中に小鋒があると上品さが際立つのを感じます。 - 13. 脇指 銘伊賀守金道
幾重にも重なる砂流し、肌が好み(どんな肌だったのかメモなし) - 14. 脇指 銘丹波守吉道
簾刃!簾刃を見る機会はなかなか無いので貴重。改めて思ったのですが、○○刃という名称だけれど、二重刃や食違刃のように刃に密接しているところに現れないですよね。平地の真ん中あたり……より鎬筋に近いあたりに現れています。帽子のラインに沿って沸がギラギラしていたのが印象的でした。
13・14はどちらも見ていて楽しい刀でした。
- 17. 太刀 銘月山貞一造之/明治三十六年春
小烏丸写し。全体的な身幅の広さに加えて、明治作の新しい刀の持つふっくら感がなんか良かったです。 - 75. 早蕨金具脇指拵
鐺(こじり/鞘の鋒部分)が細くなっている拵え。柄頭の先端も少しカーブをつけているような、あまり見ない形状でした。黒い鞘に銀色の蕨が優美に絡みつくような装飾が好みでした。 - 79. 鴉鷺図鐔
色がよくわからなかったのですが、全体が灰か銅で、そこに更に濃い色(黒?)でカラスが描かれていました。シックな色合い。
刀剣のみを目録を抜粋(タップして開く) ○=重要美術品
- ○太刀 銘長光 鎌倉時代13世紀
- 桜紅葉蒔絵太刀拵 江戸時代19世紀
- ○太刀 銘備前国住雲次 鎌倉時代13世紀
- ○太刀 銘来国俊 鎌倉時代13世紀
- ○脇指 銘広光 南北朝時代14世紀
- 短刀 銘備州長船光弘/応安三年十二月日 南北朝時代 応安3年(1370)
- 脇指 銘備前国住長船彦兵衛尉祐定/永世元年二月日 室町時代 永世元年(1504)
- 短刀 銘備前国住長船治光/佐々木伊代守 室町時代15〜16世紀
- 刀 銘備後国三原住貝正近作 室町時代16世紀
- 短刀 銘城州埋忠作/天正十八年十月日 桃山時代 天正18年(1590)
- 脇指 銘越後守藤原国儔 桃山時代17世紀
- 脇指 銘和泉守国貞 桃山時代17世紀
- 脇指 銘伊賀守金道 桃山時代17世紀
- 脇指 銘丹波守吉道 桃山時代17世紀
- 脇指 越前守助広/以地鉄研造之 江戸時代17世紀
- 脇指 銘粟田口近江守忠綱彫同作/宝永二年八月日 江戸時代 宝永2年(1705)
- 太刀 銘月山貞一造之/明治三十六年春 明治時代 明治36年(1903)
その他の展示物
ワンフロアだけかと思いきや、二階三階へと展示室が続きます。
特に印象に残ったのは古代中国の青銅器と百椿図(ひゃくちんず)。
青銅器は饕餮紋様をはじめ蟠螭(ばんち)や鳳などの、精緻な線の表現が見事でした。
百椿図は二巻の巻物で、色鮮やかな椿が数多く描かれた華やかな作品。刀剣や青銅器、仏像といった展示の中で、ひときわ明るい彩りを添えていました。
お庭散策はまた次回
「根津美術館は庭が良い」という話を以前から聞いていました。確かに入り口から空間作りに力を入れていそうな雰囲気。
お庭、一階ロビーから見える部分だけじゃないんですね。高低差のある広い庭がありますが、今回は時間の関係で少しだけの散策に留めました。
根津美術館がどんな雰囲気だったのか動画にまとめてみました。
動画31秒あたりの景色を見て、富山県の水墨美術館を思い出しました。瓦屋根と芝生の感じがね。
展示物の優美さと、雨も相まった館全体の風情を感じられて満足度の高い訪問でした。
次は明治神宮へ。
「明治神宮前<原宿>駅」が明治神宮ミュージアムの最寄駅。根津美術館の最寄り「表参道駅」から地下鉄で一駅で行けます。歩きでも30分程度。
鳥居をくぐり南参道を歩いている途中にミュージアムがありました。てっきり本殿付近にあるのかと思っていたのですが、境内地図を確認してみるとミュージアムも宝物殿もそれぞれだいぶ離れたところにあるようです。敷地がかなり広く、違う参道を歩いていたらなかなか辿りつかないところでした。


展覧会概要
展覧会名:「明治神宮の刀剣」
会期:2025年12月20日~2026年3月8日
会場:明治神宮ミュージアム
展覧会案内ページ:https://www.meijijingu.or.jp/museum/exhibitions/?id=1764556549-845628
入館料:1,000円
備考:写真撮影不可
訪問日:2026年3月3日

入館してみるとまず開放的なロビーがあります。写真右手側が展示室。
こちらも根津美術館と同様、敷地が植物に囲まれていてリラックスできます。
展示室は1階・2階と分かれており、1階には神宮本殿のジオラマや季節の行事などで使用される道具が展示してありました。2階には明治天皇にまつわるものがメインで展示されています。2階展示室の中央にドンと配置された馬車「六頭曳儀装車」が豪華で圧倒されました。目玉の展示なのでしょう。来館記念スタンプのモチーフにもなっていました。

展示室は、布製品や絵画なども同じ空間に展示されているためか照明はやや暗め。
その一方でキャプションはかなり大きく、日本語のみながら通常の三倍ほどはありそうなサイズで読みやすかったです。
以下に「明治神宮の刀剣」の部分だけ、目録を残します。
明治神宮の刀剣 目録(タップで開く)
- 日本書紀 舎人親王編 原本:養老4年成立
- 鐶頭大刀 銘 大正壬戌秋 源秀明謹造/模石上布留神宮之神剣 大正11年
- 冬御小直衣 江戸末期〜明治初期
- 御蝙蝠 塩川文麟 明治初期
- 刀 銘 奉納 吉原国家作作者同人/昭和三十三年十月三十一日/明治神宮遷宮記念 昭和33年
- 刀 銘 津軽住人/国俊造之/昭和三十三年十月三十一日/明治神宮御遷宮記念 昭和33年
- 大刀 銘 奉納 照正謹作(花押)/昭和三十四年三月吉日 昭和34年
- 太刀 銘 芸南住藤原氏正謹作/昭和四年五月日/奉納 明治神宮大前 昭和4年
- 御刀掛 明治時代
- 明治天皇御尊影 五姓田芳柳 明治時代
- 聖徳記念絵画館壁画下図 大政奉還 邨田丹陵 昭和初期
- 聖徳記念絵画館壁画下図 江戸開城談判 結城素明 昭和5年
- 御刀 銘 明治四十五年二月吉日/卍正次謹作/舞子/有栖川宮前庭 明治45年
- 御正剣 明治19年
- 御軍刀 明治19年頃
- 大太刀 無銘 南北朝〜室町時代
- 太平記 原本:室町時代成立
- 刀 銘 因幡住藤原兼先 江戸前期
- 刀 水府住正勝作之/安政六年二月日 安政6年
- 太刀 銘 帝室技芸員菅原包則八十四歳謹作/大正二年五月吉日/応村田鉄旰居士需 大正2年
- 太刀 銘 余光万世/帝室技芸員/月山貞一謹作/明治丁未奉御剣之歳/為本山君 明治40年
- 大刀 銘 伝・月山貞勝 昭和初期
- 大刀 銘 大正十四年一月吉日/大阪住人月山貞勝謹作(花押)/官幣大社朝鮮神社/明治神宮御神宝太刀二振謹作其一振 大正14年
- 刀 銘 明治神宮御神宝太刀/奉納 工華会 工藤兼房作/昭和六十一年春吉日 昭和61年
- 刀 銘 昭和十三年二月吉日於上海御陣中/以松井閣下御鍛初之鉄勲四等昭秀謹作 昭和13年
- 刀 銘 昭和十三年 二月十五日/勲四等 栗原彦三郎昭秀謹作/於朝香宮殿下南京御陣中用/飯沼参謀長閣下御鍛初精鋼 昭和13年
- 刀 銘 大和国住月山貞利彫周作(花押)/奉納 明治神宮御神前 公益財団法人日本刀文化振興協会/令和七年十一月三日 令和7年
青森(私の出身県)の現代刀工・二唐国俊刀匠の作品が展示されていたのが目に止まりました。あまり見る機会が多くはないので、思いがけず出会えたのは嬉しいところです。
月山貞一(初代)・貞勝・貞利と月山の刀匠の作品が並んでいたことに「やっぱり」と感じてしまいました。現代刀匠の名前として「月山〇〇」をさまざまな場面で見かけることを改めて実感します。
それと気になったのが目録23番の太刀。
これは現在のソウルにあった朝鮮神社に関係するものだそうです。
1910年(明治43年)から1945年(昭和20年)まで続いた日韓併合の時代。いつもの古刀や新刀を見るときとはまた違った感覚を得るというか……すごく、現代からの近さを感じてしまいました。
「刀剣を見た」というよりも「明治天皇にまつわる展示品の一部として刀剣を見た」というのが最終的な印象でした。
展示室の奥には、神宮の行事や四季を紹介する映像が流れている一角がありました。椅子に掛けて見られます。静かな空間で、神社の一年の移ろいを感じられる作品で、それがとても心地よかったです。
今回の東京遠征は以上です。
なんとトーハクと刀剣博物館には寄りませんでした!刀剣博物館は展示入れ替えでちょうど休館中だったのと、トーハクは時間が中途半端だったのでスキップ。
一日に見た刀剣の数も、写真を撮らないという労力のなさも、今の自分にはちょうど良いボリュームだったかも?と感じます(おそらくこれが普通の量……)
小雨の東京でのんびりと過ごし、次の遠征先の京都へ向かったのでした。