物吉貞宗と五月雨郷を見に行った話 「天下人・徳川家康と尾張徳川家の至宝」

今年の夏も遠征が暑い!いや熱い!
というけで三箇所連続遠征に行ってまいります。その第1弾がこちら、富山県立水墨美術館で開催されている『天下人・徳川家康と尾張徳川家の至宝』。

展覧会概要

展覧会名:北日本放送開局65周年記念「徳川美術館展―天下人・徳川家康と尾張徳川家の至宝」
会期:2017年7月7日~8月20日
会場:富山県水墨美術館
展覧会案内ページ:https://www.pref.toyama.jp/1738/miryokukankou/bunka/bunkazai/3044/exh_0100/exh_0000/exh_1703.html
入館料:前売券900円
備考:写真撮影NG

訪問日:2017年7月14日
交通費:200円(富山駅→富山トヨペット本社前)

水墨美術館さんの外観。青々とした芝生が美しいところでした。庭が広々としていて開放感があります。

この展示では、家康の遺品「駿府御分」として尾張徳川家に伝えられた名品の中から、「武将と歴史」という観点で武具・茶道具・衣類など多岐にわたる品々が展示されます。
尾張徳川家といえば、そう!徳川美術館さん。
徳川美術館さんの刀は何度か見ていますが、同じ刀を違う場所で見たらどうなるのかしら!?
それに大好きな物吉貞宗五月雨郷が出展されるとのことだったので、迷わず来ちゃいました( *´﹀` *)

展示刀剣

今回の展示本数は9振り。
たくさんの所蔵刀からたったそれだけ……まさに『選ばれし9振り』ですね!
では紹介していきたいと思います。

太刀 銘左 名物 大左文字 南北朝時代・14世紀

審神者にはお馴染み、左文字三兄弟を作刀した刀工の作です。
中反り、小鋒、寸長く身幅もあり豪壮。南北朝体配の太刀ですね。江雪や宗三を見たことがある人であれば、それに通じる雰囲気を感じられると思います。

太刀 銘藤島 南北朝時代・14世紀

加賀国の刀工・藤島派の祖。来国俊の門人。
腰反りでやや詰まった中鋒。
鋒にゆくにつれて身幅が狭くなる様を見ると、先ほどの左文字と比べてこちらはやや古調を感じます。
鎬地全体に見られるミルキーウェイ。シャ〜っと流れる白い帯のような模様がきれい。

刀 銘左文字吉見正頼研上之 永禄九年八月吉日 名物 吉見左文字 南北朝時代・14世紀

磨り上げられていてちょっとバランスの悪い体配と、暗めの地鉄に柔らかく散る皆焼…
ぱっと見へし切り長谷部に似ていません!?
これも一振り目と同じ、初代左安吉の作ですが、かなり雰囲気が違いますね。

刀 無銘正恒 鎌倉時代・13世紀 重要美術品

今回のラインナップの中だったら、この刀の見どころは映りでしょうか。
磨上げられていますがそれでも長大。小互の目を基調とした刃文にガッツリと丁子映りが表れています。とっても見やすい。
肌もきれいですね。くっきりした板目肌。
正恒は古雅な作風と豪壮な作風のものがありますが、これはその中間のような作風です。

短刀 銘則重 南北朝時代・14世紀

やっぱり。さすが則重!
肌がものすごいです。松皮肌。年輪をウネウネさせたような模様がよく見えます。。
刀の『肌』という言葉を知っている人なら、正恒からこの短刀に視点を写しただけでわっ!すごい!と思うはず。

短刀 銘相州住正宗 嘉暦三年八月日 名物 大阪長銘正宗 鎌倉時代・1936年

まるで水面のような模様が平地に表れています。先ほどの則重の肌も特徴的なのに、この正宗もまた違った模様。刀ってこんなにいろいろな表情があるのね、と思ってしまうかも。
(そして正宗の作風とは…)
展示作品のなかではこれが一番よく砂流しが見えます。

脇指 無銘貞宗 名物 物吉貞宗 南北朝時代・14世紀 重要文化財

今でこそ、このサイズで脇指というのが理解できますが、初めてこの子を見た時は「脇指なのに小さー!」と思ったことをよく覚えています。
今回物吉を見ていた人たちも同じ反応をしていました。隣の短刀正宗と比べると、確かに小さい。
脇指なのになぜ短刀よりも小さいのか。
今ならその理由がわかることがちょっと感慨深いです。勉強したんだなと。
ぜんぜん紹介になっていないけど、物吉はこれで終わり。あーなんて可愛いの!

ちなみに徳川美術館さん発行の図録の表紙も物吉貞宗だよ!この展示で買えます。

太刀 銘来国光 鎌倉時代・14世紀

直調に小乱れ。鋒の方に向けて斜めに切れ込みが入る刃文・逆足が入っていますね。
来鉄(らいがね)のようなものが見えました。

脇指 無銘郷義弘 名物 五月雨郷 重要文化財

「いつも霧がかったようにもやっとしていることが名前に由来」とあるように、刃文と刃取りの境がイマイチ見えない…すごく白いです。
黒黒と沈んだ地鉄に、霧煙る刃文の白さ。そして上品な太刀姿。
五月雨郷、きみホント何度見ても美しいね。
物吉と五月雨郷は過去の記事でも書いているのでそちらもどうぞ。
鯰尾藤四郎と当時未実装だった物吉貞宗を見に行った話

おわりに

今回展示されていた刀を一言であらわすと『わかりやすく、おいしいとこ取り』
どれも見どころが見つけやすく、特徴も隣あう刀と異なります。なので、あまり詳しくない人でも『さっきの刀と違うぞ?』と感じられるかと。
そして合計9振りというのもグッドですね。多すぎないので疲れない(笑)
気になる展示位置も良かったです。
位置自体は高めだけど、光の関係で鑑賞するには寧ろ屈むことになるかと。
「どれも優品なので見てね!」みたいなことを名のある大名家の展覧会がある度に書いてる気がするけど………これもそうだから……

見てね!!( ˆˆ )

北日本放送開局65周年記念 徳川美術館展 天下人・徳川家康と尾張徳川家の至宝
場所:富山県水墨美術館
会期:2017年7月7日(金)~2017年8月20日(日)
公式HP:https://www.pref.toyama.jp/1738/miryokukankou/bunka/bunkazai/3044/exh_0100/exh_0000/exh_1703.html

明日も出歩くのでとりあえずはご飯の写真で〆にしようかな。

駅前の蕎麦屋。麺の食感がよかった
水墨美術館さんのカフェにて。

多分初めて白えびを食べました。濃厚ですね。ねぎトロてんこもり過ぎワラタw
おわり

夏の刀剣遠征2017*

其の一(この記事)

今年の夏も遠征が暑い!いや熱い!というけで三箇所連続遠征に行ってまいります。その第1弾がこちら、富山県立水墨美術館で開催されている『天下人・徳川家康と尾張徳川家の至宝』。 展覧会概要 展覧会名:北日本放送開局65周年記念「徳川[…]

其の二

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其の三

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