■日時 2016年11月13日・14日
■場所 佐野美術館
■入館料 前売券750円
遅くなりましたが、佐野美術館の展示に行ってきた記録を書きたいと思います。
今回の展示は佐野美術館さんが所蔵する名刀の他に、日本刀剣博物技術研究財団さんが所有する刀剣も一緒に展示されました。なかでも注目だったのが11月12日・13日の2日間限定で展示される財団さん所有の二振り、刀剣乱舞に登場する短刀・小夜左文字と愛染国俊ですね。
昨年2015年の夏、公開前日に情報発表がされたにもかかわらず小夜左文字を見に宮城に人が集まりました。また今春の薬師寺、夏の中鉢美術館での大倶利伽羅・乱藤四郎の展示にも何千人単位で人が集まりました。
これはもう予想ができますね、そのとおりの大賑わいでした。
- 1 展覧会概要
- 1.1 重要文化財 短刀 銘国俊 名物 愛染国俊
- 1.2 重要文化財 短刀 銘左/筑州住 名物 小夜左文字
- 1.3 国宝 太刀 銘熊野三所権現長光
- 1.4 重要文化財 無銘貞宗 幅広貞宗
- 1.5 槍 銘藤原正真作 号 蜻蛉切室町時代末期・16世紀 静岡県指定文化財
- 1.6 短刀 無銘貞宗 名物 太鼓鐘貞宗
- 1.6.1 21.刀 無銘正宗 鎌倉時代末期・14世紀 重要文化財
- 1.6.2 31.太刀 銘長光 鎌倉時代中期・13世紀 重要文化財
- 1.6.3 38.太刀 銘国宗 鎌倉時代中期・13世紀 重要美術品
- 1.6.4 45.太刀 銘為次 鎌倉時代中期・13世紀 重要美術品
- 1.6.5 49.太刀 銘豊後国行平 鎌倉時代初期・13世紀 重要文化財
- 1.6.6 51.短刀 銘国資 鎌倉時代末期・14世紀
- 1.6.7 56.脇指 銘相模国住人広光 延文二二年十月日(号 火車切)南北朝時代・14世紀 重要美術品
- 1.6.8 61.太刀 金象嵌名備前国兼光/本阿弥(花押) (名物 大兼光)南北朝時代・14世紀 重要文化財
- 1.6.9 69.脇指 銘三条吉則 室町時代・15世紀
- 1.6.10 76.刀 銘備前国住長船与三左衛門尉祐定 天文二二年二月吉日 室町時代・16世紀
展覧会概要
展覧会名:名刀は語る 磨きの文化
会場:佐野美術館
公式ページ:https://sanobi.or.jp/exhibition/sword_2016/
出品目録:https://sanobi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2016/12/katana2016_shupponmokuroku.pdf
会期:前期 2016年11月12日〜12月23日/後期 2017年1月7日〜2月19日
11月13日、8時25分頃に三島に到着。ホテルに荷物を預けてゆっくり徒歩で佐野美術館へ。8時55分美術館に到着、8時57分には整列が始まったので列に加わります。
オープン前なのにこの混み様!

幸運なことに20分程度で入館する事ができました。
この日は展示初日。入館までに最大5時間並んだという話もありました。

展覧会名をバックに蜻蛉切と貞ちゃんのパネルが並びます。とんぼさんの迫力!高まってくるーー!!
この記事ではまず限定展示から紹介していきます。
限定展示を見る為には列に並ぶ必要があり、10人ひとかたまりのグループで限定展示品のあるコーナーに案内されます。そこには刀が何振か展示されており、その中から目当ての刀を探し鑑賞します。しかし許された時間はグループで1分というごく短い時間……なんという難易度の高さ!!!
ではまず2日限定の三振りから。
重要文化財 短刀 銘国俊 名物 愛染国俊
ちょっと大ぶりな短刀。湾れの刃文に帽子が小丸に返ります。
「愛染明王の彫り物はどこ?」
彫り物を探せなかった方も多いかも。愛染明王で画像検索をすると座像がたくさん出てきます。これ。これが茎の丁度目釘孔の上に毛彫りされていました。浅く彫られているうえに小さく、なかなか見えづらかったです。
重要文化財 短刀 銘左/筑州住 名物 小夜左文字
愛染国俊と比較して小振り。スッキリとした互の目。とても精緻な肌で、地沸が厚くつきキラッキラ。
小夜は正面からではなく、隣のガラスケースに体をつけるくらい左側に寄らないと光が当らないようになっていました。一回目見た時はそれに気づかず「ちょっと暗めな鉄の印象」。二回目見方に気がつき、ようやく刃文や肌を見る事が叶いました。見たこともないくらいのきめ細かな肌、驚きです。
国宝 太刀 銘熊野三所権現長光
今回のダークホース。ベスト ザ ベスト。
長光には優しげな印象を抱くことが多いですが、この太刀もそうかな。でももっと冴えているかんじ。
反りが高く元先の幅に差があり(ふんばりが強い と言う)中鋒。焼き頭の揃った互の目に丁子が交じり、刃縁がクッキリ、明るく冴えていました。肌も小板目がよくつみ、乱れ映りも鮮やかに立ちます。沸も足も葉も入っておなかいっぱい。でも胃もたれしない美しさ。すごい。
重要文化財 無銘貞宗 幅広貞宗
こちらは11月12日〜12月4日までの期間限定展示。
幅広貞宗という名前の他にもう一つ名前があり、名物 御掘出貞宗と言います。
家康が関ヶ原の合戦でゲットした刀の山から掘り出した一振り、なので御掘出貞宗。家康は正宗のつもりだったけど、本阿弥光徳にソレ正宗じゃないよ貞宗だよ、と言われた刀。
私のお気に入りの刀工貞宗の作品。初めて見ました。ぶっとい。とにかく太い。名前の通り幅広で強そう。鋒にゆくにつれて幅が細くなる亀甲貞宗とはかなり異なる姿。なんだか実験的?どうしてこんな身幅の広いものを作ってしまったんだろう…貞宗の作風は鎌倉〜南北朝に移り変わる過渡期の様をなぞっているように感じます。
しかしやはり名刀。太いとはいえ均整のとれた姿。大鋒、のたれを基調とした互の目・丁子交じりの刃文、つんだ肌に細かい地沸。貞宗らしい、尖らない美しさが表れた刀でした。
時間が経つにつれてこの列は空いてきたので、しつこく10回くらい並びました(笑)
見終わってため息。改めて、財団さんはイイモノたくさん持っているんだなと戦慄。
お次は会期中通しで展示されている我らが二振り、蜻蛉切と貞ちゃんの紹介です。
槍 銘藤原正真作 号 蜻蛉切
室町時代末期・16世紀 静岡県指定文化財
撮影不可のため佐野美さんのツイートを転載。平三角造の大笹穂槍。刃の中ごろがややふっくらしている穂(槍の刃、柄でない部分)の槍を笹穂槍と呼び、その中でも特に大きい笹穂のものが大笹穂槍となります。
そして穂長が一尺(約30cm)以上の大身槍(おおみやり/だいしんそう)と呼びます。
三名槍はみんな大身槍。蜻蛉切は大身槍で大笹穂槍、ということになります。
穂は三角柱で、裏側は平、表が山を有する形となっています。
表側は互の目を交えたのたれ刃に、山をはさんで両方に二筋樋。裏側は大きな樋の中(真ん中の黒く見える部分)に地蔵菩薩・阿弥陀如来・観音菩薩の梵字、その下に三鈷柄剣。樋の外側には不動明王の梵字(重字)に蓮台。
蜻蛉切を見るのはこれで二度目。初めてのときは「え、これで大きいの?小さくない?」とか「軽そう」という程度の感想でした。今回は刃文や肌も見る事ができて個人的には満足です!
短刀 無銘貞宗 名物 太鼓鐘貞宗
貞ちゃんこと太鼓鐘貞宗。貞宗の作品の中では一番小さい子。うん、確かに小さい。太鼓鐘は寸も短ければ身幅も細い。ほかの貞宗…たとえば朱判貞宗は大きく身幅もあり、太鼓鐘とはだいぶ異なる姿をしています。ここでまた貞宗の作風の幅を感じました。
細身でフクラ枯れた鋒。帽子は小丸に長めに返り、刃文はのたれて匂口は明るい。表面は樋の中に素剣が彫られています。
この短刀は「貞宗っぽくない」と言われていて、その視点から見てみると、確かに姿がちょっと細すぎると感じました。鋒も個人的に貞宗の短刀に感じている「ツン」がない。
そして肌。貞宗の作と極められている刀は寺沢貞宗のような詰んだ肌の物もあれば石田貞宗のように肌立った(ガサガサしているようなかんじ)ものも。太鼓鐘は後者寄りでした。板目肌流れ、そしてうねり具合がやや強いような。
うーん………貞宗。
ねえどうして貞宗は所在がはっきりしているのは無銘のものばかりなの? 困る。
以下は前期展示で気になったものを紹介していきますね。
21.刀 無銘正宗 鎌倉時代末期・14世紀 重要文化財
正宗にしては反りが強いな!?が第一印象。正宗の作風もまた幅がありますよね…ぜんぜん覚えきれない。ギラギラと大きく輝く沸は「雪のむら消え」と称され、刃文から肌にスゥッと溶けてゆくような景色が美しかったです。物打に見えた傷のようなものは金線……教えてもらわなければ絶対に傷だと思った。
31.太刀 銘長光 鎌倉時代中期・13世紀 重要文化財
小丁子、蛙子丁子、乱れ写り鮮やか。トロッと立つ丁子がよい。
38.太刀 銘国宗 鎌倉時代中期・13世紀 重要美術品
すっごい丁子!棟に迫るくらい激しい。
45.太刀 銘為次 鎌倉時代中期・13世紀 重要美術品
鋒の方飛び焼き多い。映りも多い。丁子。パッと見鎌倉太刀の姿に見えない、反りの浅い形状でおもしろかったです。
49.太刀 銘豊後国行平 鎌倉時代初期・13世紀 重要文化財
期待通りの行平。姿よし!
細直刃の上に見える鱗のような雲のような模様は湯走り。こんなにわかりやすい湯走りを初めて見ました。
51.短刀 銘国資 鎌倉時代末期・14世紀
締まった直刃に板目がよく表れた肌。地と刃のコントラストが強い。ドシンとした銘が印象的でした。
56.脇指 銘相模国住人広光 延文二二年十月日(号 火車切)南北朝時代・14世紀 重要美術品
長さに対して身幅広い。丁子に互の目を交え、飛焼き、皆焼。細かく激しく乱れる。沸よく付く。
そう、火車切もまた見方に工夫が必要でした。佐野美術館で角に展示してある刀を見るときは要注意だね。
61.太刀 金象嵌名備前国兼光/本阿弥(花押) (名物 大兼光)南北朝時代・14世紀 重要文化財
名前の由来のとおり長大な太刀。そして大鋒。尖り気味の小さな互の目からはじまり、物打にゆくに連れて大きな互の目になります。今までみた兼光は片落ち互の目を焼いたものが多かったので、作風が異なると感じました。
69.脇指 銘三条吉則 室町時代・15世紀
刃縁が冴えていて、上から見たとのキラキラと下から覗いたときのふんわり感。その差がきれい。
76.刀 銘備前国住長船与三左衛門尉祐定 天文二二年二月吉日 室町時代・16世紀
腰開き互の目に蟹の爪(互の目の頭が丁子になった刃文)、祐定の特徴がよく表れた一振り。二二年は四年と読みます。
第一展示室の一番最初に展示されていた古大和。
ちょっと気になったので恐れながら電話で伝えてみたところ、二回目に訪れたときはキャプションが変わっていました。なるほどね。
会場ではいつも仲良くしてもらっているフォロワーさんや#とうらぶ男子のないなさんともお会いし、あーでもないこーでもないと言いながら楽しく見ることができました!
ないなさんも既にレポートを上げているのでこちらもチェック!⇒小夜左文字と愛染国俊を見に佐野美術館に行ってきた話
もしかしたら静岡テレビで放送されたかも??
恐れ多くもPR記事を書かせて頂きました、日本刀は素敵 (WAC BUNKO)の著者であり佐野美術館の館長である渡邉先生とお会いし、直接感想をお伝えすることもできました!とってもはっぴーでござる!!
あとこれも書き留めておきたいな。
12月17日に私と長谷部刀剣愛好会を主催しているへびさんとで、刀剣解説会を開催してきました。事前に展示刀剣をチェックし資料を作成して臨んだ解説会は、アンケートを参照するに参加者の皆さんに喜んで頂ける内容だった様です。よかったよかった。
今後も解説会や勉強会の案内を発信していくので、興味のある方はチェックいただけると嬉しいです。

今回の図録。小さめサイズで持ち運びに便利。※太鼓鐘貞宗は掲載されていないので注意
とうらぶ公式コラボでは最近お馴染みになりましたね、パネルと新規イラストの展示。
今回はエントランスの他に日本家屋でも展示されていました。雰囲気が違って素敵。



たまらんなぁ〜〜〜〜
前期展示も良かったけれど、とうらぶファン的には後期展示がうれしいかも?
虎徹のところ、蜂須賀・浦島と書かずに”ひげのこてつ”と書いてしまったのは…あれです、いわゆる虎徹難民なんです。だからついそっちの名前が先に思い浮かんでしまったんですごめんね。検非違使出ません^^
他にも名刀がたくさん展示されるので、展示目録をチェックだぞ⇒作品目録PDF
2回三島に行っておいて実はスタンプラリーが未完。開催中に行けるだろうか…これまたないなさんが記事を更新されているのでチェックしてから行こ。
年明けの後期展示も楽しみにしつつ「小夜左文字・愛染国俊・蜻蛉切・貞ちゃんを見に行った話 〜名刀は語る 磨きの文化〜」を終わります。
佐野美術館 https://sanobi.or.jp/exhibition/sword_2016/
「名刀は語る 磨きの文化」
前期 2016年11月12日〜12月23日/後期 2017年1月7日〜2月19日